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前編 真っ直ぐな想い/6
小洒落れた店でディナーをして、その後気分を良くした俺たちは、数人で居酒屋へはしごした。…それから数時間。居酒屋を出た頃には深夜1時を軽く回っていて。
「…タクシーつかまえらきゃ」
「っ、大丈夫か!?」
すっかり酔いがまわって足のもつれた俺を、俺よりもはるかに身長の高い真島さんの胸が受け止めてくれる。
真島さんは、俺とそんなに遠く年も離れていないのに、課長を任されるほどのバリバリのエリート営業マンで、俺からしてみれば手の届かない憧れの先輩だ。
「ん、ごめんらさい」
「…舌、回ってないぞ」
そう言って軽く笑うと、真島さんは俺の腰をグッと引き寄せる。虚ろな視界の中、その整った顔が近付いてきたと思ったら、唇に暖かいものが触れた。
「…っ、…ふ、ぁっ、」
甘く、時折強く舌を絡め取られたと思ったら、まだ名残惜しさも残る間にその唇は離れていった。俺が潤む瞳で見上げていると、真島さんは意地悪そうに聞いてくる。
「次のお相手は高校生か?」
「ちがっ、 あれは、本当に甥っ子のことで。 高校生らんて何あげたら良いかわかんらいし…」
「ふ~ん」
隼人の誕生日まで、丁度一週間に迫っていた。
いつもは図書カードや金券類等、無難な物で済ませていたが、今朝の詫びも兼ね、今年は何か喜ぶ物でもあげた方が良いかと考えていた。
しかし今時の高校生の欲しがりそうな物などわかるはずもなく…。困った俺は先程の食事の際、高校生の子供を持つ先輩の一人から、こっそり情報収集していたのだ。それを真島さんは…。
「そぅ。 まぁ、良いけど。それよりも、この覚束ない足取りで帰るなんて言わないだろうな。今夜は泊まっていけ」
腰に響く低音の甘い声で、わざと息がかかるように耳元で囁かれると、否応なしに体が震えた。
「ん、で…もっ、んぅっ」
その肩を押し返して、帰ろうとする俺に、また熱いキスが降り注ぐ。俺は、酒とキスで朦朧とする意識のまま、気がつくと「うん」と返事をしていた。
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