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前編 真っ直ぐな想い/10
遠くの方から、カチャカチャという甲高い音が聞こえてくる。…何だよ、うるさいな。こんな休みの日に。それにしても美味しそうな匂いがするなぁ。この香り、よく知ってる。これは隼人がよく作ってくれるスクランブルエッグの……、そう…、
「…っ!!?」
「あ、おはよう。よく眠れた?まだ9時だよ、もう少し寝てて良いのに」
「……はや…と…」
「え、何?鳩が豆鉄砲くらったような顔して」
「何で…ここに…」
「へ?だって昨日帰り遅かったんでしょ?きっと酔ってベロベロじゃないかって来てみたら、案の定ベッドからずり落ちててさ。そのまま転がしとくわけにもいかないし、ベッドまで抱き上げて差し上げました」
…あぁっ、俺はまたこんな子供の世話になって!!何て不甲斐ないっ!!
ベッドの上で頭抱えて自己嫌悪という名のブラックホールに飲み込まれかけていたら、ふと人影に覆われた。瞬間、暖かい温もりが体を包む。
「…は…や」
「ありがと、メール嬉しかった。少しは、俺のこと気にしてくれたって、自惚れても良い? 」
「っ、ばかっ!! んな訳あるかっ!誰がお前のことなんてっ、」
無意識だった。ただ、咄嗟に隼人を突き飛ばした。それだけだった、…はず。
「…どうしたの、俊也さん」
今度は、アイツが豆鉄砲くらった鳩みたいな顔してた。
(へ?俺何かおかしなことしたっけ?)
「いつだって無反応で、クールで、自分だけ余裕ぶって。小さい子供をあしらうみたいに、軽く交わされて…」
(え、俺、そんな感じだった…っけ?)
「どうしたの?今日は随分リアクションが良いみたい」
そんなことを言いながら、ベッドの上をジリジリと俺に詰め寄ってくる。
(ちょ…まって)
「…それに」
頬をアイツの暖かい掌が包んだ。
「少し、頬が赤く見えるのは、俺の気のせいかな」
「っ、…んなはず、なっ」
言いかけた瞬間、隼人に抱きしめられた。
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