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第三章 本
あ、と思わず出してしまった声。
そして、反射的に伸ばした手。
だが要人は、三つ先の本棚の角から姿を現した優希を目にすると、慌てて手を引っ込めた。
二人は今、繁華街から離れた郊外に来ていた。
町はずれの、古い本屋。
今のご時世、本なら電子書籍やネット通販でさして苦労することなく簡単に手に入る。
だが、こういった昔ながらの本屋は未だ町の片隅に細々と残っている。
店内に漂う、独特の紙とインクの香り。
思いがけない一冊に巡り合えた時の感動。
簡単便利を追求するだけでは、手に入らないものがここにはある。
そんな気持ちを味わうことが大好きな優希に誘われて、要人は本屋に来ていた。
しかし、思いがけない出会いをしたのは、要人も同じだった。
ずっと読みたかった、あの本の続き。
上巻・下巻に分かれた本の一冊に、この小さな本屋で巡り合ったのだ。
増版もされぬまま、まるで禁書扱いを受けるようにして消えて行った問題作。
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