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第三章・4

 優希が掲げた一番上の本を、要人は手に取った。  児童書だ。  もうこんな字の大きい本を読む年齢ではないだろうに、優希は一体どうしてこの本を?  要人の疑問に応えるように、優希は自分から語り始めた。  この本の挿絵を描いた人物が、ちょうど最近天に召されたこと。  彼はその手で描く対象物である花や鳥、昆虫など全ての生き物を心から愛していたこと。  そして、驚異の観察眼と器用な指先で生み出す作品は、ある意味写真より正確に像を捉えていたということ。 「すばらしい画家だったんだ。かなり古い本だよ。こんな昔から、しかも児童書に描いてたんだなぁ」  興奮し、目を輝かせて熱く語る優希に、要人はなぜ自分が例の本を手にしなかったかが解かった。  不思議なことに、優希に対する自分の気持ちが変わってきているからだ、と気づいた。

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