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第三章・5

「要するに、だ」  寮の自室に戻った要人は、ベッドに体を投げ出し独り言をつぶやいた。  優希の前で、カッコつけたい、なんて考えてる自分がいるんだ、と結論付けた。  今日あの本を買わなかったのは、要人はこんな本を読むんだ、と思われたくなかったからなんだ。  まるでエロ本みたいな表紙で、官能小説のような描写で飾られた本を読むようなヤツ、と思われたくなかったんだ。 「なぜだ……」  冗談半分に、要人は難しい顔をした。  だが、半分が冗談ならば、残りの半分は本気なのだ。  以前は、そうじゃなかった。 『優希、今朝起きたらチンチンが硬くなってた!』 『優希、精通が来たぞ、俺!』 『優希、俺さ。夢精しちゃった』 『優希、これ一緒に見ないか?』  何の抵抗もなく、同年代の優希も経験するであろう二次性徴をあからさまに語り、共有してきた。  二人でこっそりピンク雑誌を隠れ読んだりしたものだ。  でも優希は。  優希の方からは、そんな話題を振ってきたことがない。  要人の奔放な告白を、困ったような笑顔で受け止め、恥ずかしそうに目を逸らしてはいなかったか?

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