38 / 105
第三章・6
恋人として付き合いたい、と願ってそれが成就した。
あの時は、天にも昇る心地だったっけ。
翌日には、すぐさまキスしようとしたけど……。
「あの時の優希、可愛かったな」
要人は、小さく笑った。
キスは、取り乱した優希に、思いっきり拒否されてしまったのだ。
その後もそうだ。お泊りに誘ったけど、結局セックスはしなかったし。
恋人になってすぐは、これまでと同じように。
今まで付き合ってきた女の子たちと同じように、キスして、抱き合って、セックスしようと張り切っていたものだ。
けれど、優希が誰より大切な今は、優希に誰より好かれたい今は、逆に奥手になっている。
自然に、心も体も許しあえるようになる時期を待とう、と静かな気持ちに落ち着いている。
「でも、アレはないよなぁ。どうしちゃったんだろう、俺」
優希の前で手にすることをためらった、あの本。
別に構わないはずだ。
優希も児童書について、なぜそれを買うのかを詳しく話してくれた。
同じように、一見エロ本だけど奥深いテーマが隠されてるんだ、と説明すればよかったんだ。
「あ~も~、俺って馬鹿~……」
夕食を摂るのも面倒で、そのままベッドでごろごろしていた要人は、いつのまにか眠ってしまっていた。
ともだちにシェアしよう!