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第三章・8
今日、その思い出の本を見つけて手を伸ばしたはずなのに、黙ってそれを引いた要人。
要人は何を手に取ろうとしてたのかな、と彼の近くに寄った時、周辺の背表紙を横目で眺めてあの本を優希も見ていたのだ。
話題にもせず、要人は知らんぷりを決め込んだ。
以前は、ああじゃなかったのに。
子どもの頃から、気軽にボーイズトークはやってきた。
一緒に、グラビア雑誌をこっそり見たこともある。
「確かに、恋人として付き合ってくれ、って言われた時は驚いたけど……」
そして、翌日にはキスを迫ってきたり、家に招いて突然押し倒してきたりしたけど。
そういえば今は、そんな感じに積極的に体のスキンシップを求めてこないな、と優希は気づいた。
「もしかして、待ってるのかな?」
僕の方から要人に体を寄せてくることを、ただひたすら我慢して待ってるのかな。
「あ~。でも、どうしたらいいんだろ」
答えの出ぬまま、優希はソファに横になった。
だが、このまま眠ってしまうわけにはいかない。
それならそうと、傾向と対策を練る必要がある。
優希はソファから腕を伸ばし、ローテーブルの上にあるタブレットに手に取った。
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