40 / 105

第三章・8

 今日、その思い出の本を見つけて手を伸ばしたはずなのに、黙ってそれを引いた要人。  要人は何を手に取ろうとしてたのかな、と彼の近くに寄った時、周辺の背表紙を横目で眺めてあの本を優希も見ていたのだ。  話題にもせず、要人は知らんぷりを決め込んだ。  以前は、ああじゃなかったのに。  子どもの頃から、気軽にボーイズトークはやってきた。  一緒に、グラビア雑誌をこっそり見たこともある。 「確かに、恋人として付き合ってくれ、って言われた時は驚いたけど……」  そして、翌日にはキスを迫ってきたり、家に招いて突然押し倒してきたりしたけど。  そういえば今は、そんな感じに積極的に体のスキンシップを求めてこないな、と優希は気づいた。 「もしかして、待ってるのかな?」  僕の方から要人に体を寄せてくることを、ただひたすら我慢して待ってるのかな。 「あ~。でも、どうしたらいいんだろ」  答えの出ぬまま、優希はソファに横になった。  だが、このまま眠ってしまうわけにはいかない。  それならそうと、傾向と対策を練る必要がある。  優希はソファから腕を伸ばし、ローテーブルの上にあるタブレットに手に取った。

ともだちにシェアしよう!