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第三章・11

 思わず小走りでドアに駆け寄る時、観葉植物の鉢に足の小指をしたたかに打ちつけた。  悶絶しながらドアを開くと、手にレジ袋を提げた優希が立っている。 「や、やあ! 早かった、ねッ!」 「どうかしたのか?」 「いやその。今、足の小指打っちゃって」  いいから上がって、と言う要人は、変な風に体を泳がせながら前を歩く。 「足の小指かぁ。痛いよね、そこは」 「全く……。ほら、そこの鉢植えの角で。優希の言うとおり、丸い鉢を選ぶべきだったよ」  そういえばこれは、インテリアにグリーンを入れたいから、と要人が買った観葉植物だ。  選ぶのに付き合ってほしい、と請われ、一緒に店に行ったんだ。  あの時も、買い物帰りに一緒に同じ部屋で過ごしたっけ。  でも、何もなかった。 (今日は違うぞ!)  優希は、手にしたレジ袋を改めて握りしめた。 (待たせてごめん、要人。今夜、君とキスしてみせるよ!)  部屋の奥へ進むにしたがい、ピザの香りが強くなる。  要人が気を利かせて、準備してくれたんだ。きっと。  勝負は食後だ、と優希は腹をくくって頭の中の計画を復唱した。

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