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第三章・13
そんな頃合いに、優希が口にプレッツェルを一本くわえて要人を真っ直ぐ見つめてきた。
「な、要人。ゲームをしよう」
「ゲーム?」
「チキンレースの一種さ。こう、プレッツェルの両端から順に食べ始めて、先に口を離しちゃった方の負け」
優希!?
優希、それって。
それって、ポッキーゲームだろ!
どうしたんだ、一体!
今夜のお前は、ちょっと変だぞ!?
いつもとは逆に、自分が優希にどぎまぎさせられている。
そんな気持ちに勘付かれないよう、要人は平静を装って優希にぐいと顔を近づけた。
「負けると解ってる勝負を挑むのか?」
「君が勝ったら、この本をあげるよ」
は、と要人は目を円くした。
優希が出したのは、今日買い損ねたあの本だったのだ。
思わず、苦笑いがこぼれる。
そんな要人に、優希が酔った眼差しを向けてくる。
「要人、忘れてたろう? この本は、小さい時に一緒に読んだよ」
「何もかも、お見通しなんだなぁ。解かった。受けて立とう!」
二人は顔を近づけて、プレッツェルの両端をくわえた。
互いに、少しアルコールの匂いを感じていた。
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