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第四章・2
「バレンタインデーには、恋人同士でプレゼントを交換するだろう?」
男が男に、チョコレートを贈ってもいいと思うんだ、と要人は得意げに優希に話す。
「以前は宗教的な、真摯な意味合いもあったらしいけど。何だか、素敵な文化だよね。で、俺から優希へプレゼントを用意したってわけ」
にこにこと話す要人は、それを聞きながら優希が所在無げにもじもじしている様子を感じていた。
あぁ、やっぱり優希は。
生真面目な優希は、こんな俗な慣習には乗らなかった。
恋人同士でのプレゼントの交換。
そんなことなど、全く頭になかったに違いない。
2月14日を前に、繁華街のショップはこれでもかとばかりハートマークを強調しては、商戦を展開していたというのに。
正直言えば、一言声を掛けて優希にも自分へのプレゼントを用意しておいて欲しかった。
大切な人と、想いを交換したかった。
だが、無理強いはするまいと決めたのだ。
優希は、今までつきあってきた女の子たちとは違う。
そういうことを押し付ける気はなかった。
彼とは、自然にこの大切な気持ちを一緒に育てていこうと決めたのだ。
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