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第五章 猫

 はぁ、と溜息をつきそうになり、要人は慌ててそれを押し殺した。 (気づかれたかな? 気づかれただろうな)  心を引き締めなおし、再び作業に取り掛かる。  窓もない、家具もない。  時計すらない、ただ四角い広い部屋。  首を上げたとしても目に入るのは、アイボリーホワイトの壁紙だけだ。  そして要人同様、もくもくと作業を続ける4名の生徒たち。  椅子に腰かけデスクの上で、ただ手先だけを動かす作業。  部屋中央に固めて設けられたシンプルなデスクの上には、それぞれに領収証の冊と黒インクのスタンプ台、そしてこれまたアナクロな木台ゴム印が。  前時代的、というよりお目にかかったこともない代物を使って、ただひたすらに領収書をめくり判を押す作業を、要人たちは強いられているのだ。  

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