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第五章・3

 人間は社会に出ると、何も華やかな仕事や成功だけとは限らない。  場合によっては極端に肉体的、精神的な苦痛を受ける場所で、じっと耐え忍ばねばならない状態が続くことだってありえるのだ。  そんな極限状態にあっても常に神経を研ぎ澄まし、こらえ続ける事のできる精神力を持つことが、要人の通う学園の目指す人間像だった。  要人はさすがに生徒会長だけあって、初っ端から飛ばすことはなかった。  常に一定のリズムで、無心で務めていた。  だが、そろそろ限界に近くなってきた。  生徒会長とはいえ、まだ10代の少年だ。  思いきり体を動かす、体育プログラムの方が好きだ  そんな時、心に浮かんだのは。 (優希に会いたいな)  早いところ、こんな退屈極まりない授業は終わらせて、優希と一緒に帰りたい。  途中でカフェに寄ってお喋りして、よかったら部屋に誘って夕食を楽しんで。  その後……。 (その後……)  今度は妄想に耽りそうになったところで、終了の音声が流れた。  途端に、同じ室内で訓練に当たっていた4名たちがくつろぎ始める。  大きく伸びをしてみたり、ぐったりと椅子の背に体を預けたり。  しかし要人は、これまでと同じように淡々と作業台の上を片付ける。  ペースを乱さず、気を抜かず。  退室するまで終了ではない、と心得ていた。  しかし、我ながらよく頑張ったものだ。

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