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第五章・6

「あ」 「何だ?」 「え~っと。言っても、怒らない?」 「言わなきゃ、怒るかどうか解からないよ」  きょろきょろと、周囲を窺う要人だ。  僕だけでなく、周りにも気を遣うようなことなのか?  くだんの『猫cafe もふもふ亭』は、繁華街を抜けたところに開けた公園の敷地内にある。  すでに雑多な人混みは抜け、公園に足を踏み入れたところだ。  平日の夕刻なので、あまり人影は見えなかった。 「言ったら、怒るだろうな~」 「やけに引っ張るなぁ」  犬の散歩をしている男性が二人の横を通り過ぎた後、要人は優希に蒸し返してきた。 「やっぱりイメチェンだ。猫カフェは次にして、今からピンクの服を買いに」 「だからソレは……」  今度は眉までひそめて口を尖らせた優希に、要人は素早く顔を寄せた。 「んッ!?」  ちゅ、と小さく明るい音を立てて、要人の唇があっという間に優希に触れ、一瞬にして去って行った。  あ、あぁ、あ、と言葉が出なくなった優希に、悪戯っぽく笑みを寄越しながら、要人は言った。 「今の顔見たら、キスしたい、って思った」 「かッ、過去形で言うな!」  全くもう! と怒って見せる優希だが、嫌がってはいない。  そわそわと周囲を見渡したかと思うと、恥ずかしげにうつむいて見せる。  そうかと思うと、要人の方を向き何か言いたげな顔をして、ふいと目を逸らす。

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