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第五章・10
ところがここにいる猫たちは皆、半端なぶちが体に散っていたり、三毛であるのに顔に鼻くそのような黒点があったり。
妙に尻尾が短かったり、やけに丸々と太っていたりと、庶民的な事この上ない。
そこへ、老婆がトレイを手にしてやって来た。
「この子たちはみんな、アタシの猫でしてね。店長が帰ってきたら、もっと器量良しの子たちを出してあげますよ」
店長は老婆の孫娘らしいが、彼女が不在の間に高価な猫達に何かあったら怖いから、と言う。
「かわいそうだけど、みんな檻の中に閉じ込めてますよ。孫がもうすぐ帰ってくるだろうから、そろそろこの子らを二階に上げて、高級ネコちゃん達と入れ替えないと」
そして、トレイに乗せていたカップを二人に渡してきた。
「はい、これは口止め料。猫達を入れ替えてたこと、内緒ですよ」
カップには、甘酒。そして黒砂糖が添えられていた。
ありがとうございます、と要人と優希が素朴なティータイムを楽しむ中、老婆の猫達もまたのんびりと過ごしている。
「こんな猫もいいよね。何かこう、肩の力を抜いてくつろげるよ」
「要人は、高級ネコちゃんだと緊張する?」
「この子、幾らしたんだろう、なんて考えそうな気がする」
そんな他愛のないことを話し笑っていると、二人のすぐ足もとにいた白い猫が奇妙な声で鳴き出した。
アオーンアオーンと、これまで聞いたことのないような鳴き声だ。
猫は、ニャーニャーじゃあなかったか!?
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