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第五章・12
「あらあら、お客様の前で。ごめんなさいねぇ、すぐ終わりますからね」
「去勢とか避妊とか、してないんですか?」
「最近は孫娘がうるさいんで、ぼちぼち病院に連れて行ってるんですけどねぇ。この子たちは、まだだったかしら」
「そんなアバウトな……」
「でも、生まれたばかりの子猫は、そりゃあ可愛いくてね。そういう楽しみが無くなるのは、ちょっと寂しいねぇ」
要人と老婆は、何やら猫話で盛り上がっている。
取り残された感の優希は、顔を赤らめながらも猫の交尾をちらちらと窺っていた。
やがて白い雌猫が、ギャー! と物凄い悲鳴(と、優希には聞こえた)を3回ほど上げ、雄猫は噛んでいた首を放すと素早く走り去っていった。
解放された雌猫は、しきりに体を床に擦り付けたり、性器周りを舐めたり。
しかしその後は、まるで何事もなかったかのように振る舞っている。
「雄猫のおちんちんには逆棘が付いてるらしくてね。それで抜く時に痛いもんだから、雌猫はあんなに怒るんだよ」
「そうなんですか」
「怒った雌に攻撃されないように、雄は首を噛んでまぐわうのよ」
「なるほど~」
対象が猫とはいえ、赤裸々に性に関する話を楽しんでいる要人と老婆だ。
そんな二人の会話に首まで赤くなりながらも、自分はこうじゃなかったはず、と優希は考えていた。
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