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第五章・13
(以前なら、猫の交尾なんか平気で口にしてたはずなんだ、僕も)
それがことさら意識して恥ずかしがるようになったのは、外でもない要人と恋人として付き合い始めたからだ。
(ここに来る途中で、キスしちゃったし)
猫に、自分と要人を重ねてしまったのだ、きっと。
そして……。
(そしてそのうち、僕と要人もあんな風に……!?)
優希は眼を堅く閉じ、ぶるんとひとつ首を振った。
「優希」
「え!? なッ、何だ!?」
「おばあさんの猫たち、二階へ連れて行くって。俺たちも手伝おう」
「あ。そッ、そう? 解かった」
何やら顔が赤く火照って、ぎくしゃくとした優希の様子を、要人は微笑ましく感じた。
猫の交尾にうろたえるなんて、かつての冷静沈着な優希には見られなかった魅力だ。
そしてひとつ、あることを試してみようと心に思い描いていた。
やがて猫をみんな二階へ運び終わり、二人は猫カフェを後にした。
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