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第五章・14

 筍ごはんをたくさん貰ったから、食べていかないか?  そんな要人の誘いは、実に自然に優希へ届いた。 「丘山(おかやま)が試作品を俺にくれてさ。食べたら感想を聞かせて欲しい、って言うんだ」 「試作品? もしかして、まだ相原(あいはら)と張り合ってるのか」 「うん。完璧な筍ごはんを作り上げて、文句なし美味い! って唸らせてみせるんだって」  丘山は、料理が趣味のクラスメートだ。 いろいろと珍しいものをこしらえては、彼女にまるで供物のように捧げている。  ところがそれに美食家の相原が、一言物申してきたのだ。  彼女にプレゼントした弁当を脇から出てきて一口食べ、こんな事を言ってきた。 『確かに美味いが、火加減がいまいちだな。余熱を考えると、これは1分早くコンロから下ろすべきだった』 「相原らしいなぁ。食には妥協なし、か」 「俺は食べられさえすれば、多少の火加減なんか気にしないんだけどね。自信がないから、優希の意見も聞かせてくれよ」 「うん、僕でよければ」  そんないきさつを経て、優希を自宅へ招き入れることに成功した要人だ。  心の中では小躍りしながら、且つ、一抹の不安も感じながら、自分で食事の準備を始めた。 「僕も何か手伝うよ」 「いや、大丈夫。すぐ済むから、座ってて」

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