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第五章・15

 要人は優希を待たせてあるリビングへ、次々と料理を運んだ。  例の筍ごはんに、副菜を少々加えて食卓の完成だ。  優希をソファに座らせなおして、二人料理に向き合った。  そして一口、食べてみて……。 「おいしい!」 「うん、美味い!」  丘山の筍ごはんは、想像以上に美味しかった。  筍のコリコリとした食感に加えて、心地よいねっとりとした別の食感も味わえるのだ。 「これは何だろう?」 「わらび、らしいぞ。丘山がくれたメモに書いてある」 「なるほど。わらびも旬の味覚だな」  薄くスライスした大振りの筍と、3㎝程度に切りそろえたわらびがメインの炊き込みご飯。  食感の違いもさることながら、春らしい香りも楽しめるとはなんと贅沢な!  さらに、細かくみじん切りにした人参と油揚げも加えてある。  人参は彩り、油揚げは風味をアップさせている、名脇役だ。  筍ごはん以外に、要人は簡単だが副菜を揃えておいた。  レトルトの豚バラ炒め。フリーズドライのもずくスープ。冷凍食品の春巻き。  ただ、それぞれには肉を足したり、豆腐を入れたり。  ちぎったリーフやトマトを添えたりと、それなりに無味乾燥にならないように気を遣った。  そして。 「筍ごはんには、辛口の白がよく合うんだって」  そう言って要人がグラスに注いだのは、よく冷えたデイリークラスのワイン。 「要人、未成年が飲酒は……」 「いや、これも丘山が絶対いけるから、って。値段の割には美味いから飲んでみてくれ、ってさ」

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