75 / 105
第五章・17
「ん~、時々飲むかな。一人でこっそり」
「オジサンみたいだよ、要人」
軽く笑って脱出を試みる優希だったが、ここは逃がさないぞと要人は軌道を戻す。
「だから、優希。君と一緒に飲めるようになりたいよ。おひとり様じゃあなくって、二人で楽しみたい」
予想外のリアクションだ。
返答に詰まった優希の隣へ、要人は移動した。
手には、ワインの瓶を持って。
「アルコール度13.50%、飲み頃温度は8℃だって。少し冷やしすぎたかな」
ワインのラベルを見せるように、優希へと身を寄せてくる要人だ。
素面だったら身を固くするところだが、ワインの力は絶大だった。
優希は特に抵抗なく、要人の持った瓶を覗き込んだ。
「度数が13%以上あるのかぁ。ビールはせいぜい5.0%前後だから、僕が酔っ払っちゃうわけだ」
「そろそろ眠くなってきたんじゃないか?」
要人は酔いをいいことに、優希の髪にそっと触れて弄り始めた。
されるがままに、ただ口先だけで反撃する優希は、すっかりのぼせてしまっている。
ともだちにシェアしよう!