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第五章・18

「要人は? 君、ワインを三杯も飲んだくせに酔っぱらったり眠くなったりしないのか?」 「俺はほら、オジサンだから」  あはは、と優希は顔を上にあげて明るく笑った。  髪が跳ね、白い首筋が要人の目の前に露わになった。  そう。これを待っていたのだ。  要人は無言で優希の首に顔を近づけ、軽く甘く、だが深く噛んだ。 「ぅわあ!」  途端に飛び上がる優希だ。  突然の愛撫にうろたえ、要人への眼差しは憤りを訴えている。 「なッ、何だ。突然!」 「優希が好きだから、だけど。ダメかな」  いやだけど、でもそんな、と慌てふためく姿すら官能的。  ああ、俺も酔ってるんだ。 「だけど、首を噛むなんて! 僕は猫でもないし、雌でもないぞ!」 「そりゃあ、そうさ」  だから、と要人は、優希へ自分の首筋をさらして見せた。 「優希も噛んでいいよ、ほら」 「え!?」  これでおあいこだから、と要人は優希の顔へ首を近づける。  目の前が、要人の首筋ですっかり遮られてしまった。  押すことも引くこともできず、優希は恐る恐る彼の首へと口を近づけ、やんわりと噛んだ。 「ん……」 「要人?」  喉奥でかすかに響いた、要人の呻き声。

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