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第五章・20

「どうぞ」 「……噛むぞ」 「嬉しいよ、優希」  優希もまた要人の首筋を愛撫することで、一方的に受け身にまわる恐怖心から解放されていた。  組み敷かれ、ひたすら攻められ、自我を失うまで追いつめられる……そんなセックスへの脅えが薄らいでいた。 「優希、もう少し下まで噛んでみて」 「これくらいか?」 「あ。気持ち、いぃな」  ソファに腰掛け、互いの首筋を噛み合った。始めは、交代で。  そのうちに、夢中で相手を求め合うようになった。 (俺をアルコールに強い体に産んでくださった母上に、感謝!)  以前パッチテストをしたことがあったが、要人はALDH2活性型だった。要するに、酒に強い体質だ。  だからこそ飲みすぎには注意するように、と医師に釘を刺されたが。  ワイン三杯飲んでも、すでに酔いが醒めている要人。  かたや、ワイン一杯で酩酊し、すっかりエロチックに蕩けている優希。 「あ、ダメ、だぁ……。要人、そ、んな……ッ」  うわごとを口にしながら、それでも必死に腕を伸ばして空を掻き、要人を愛撫しようと頑張っている。

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