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第53話

「その節は悪かった、どうかしてたんだ、反省してる」    そう早口でまくしたてると、舌で裏の筋をなぞりながら答えをよこす。 「あれ以来、折に触れてきみのを想像した。実物は色艶といい、勃ちぐあいといい抜きんでていて。惜しむらくは大きくて頬張るのがひと苦労だけど」    兄貴のは、と口走りそうになったのを咳払いで濁す。輝夜がペニスに点数をつけるにあたっては、寸法以外にもであるかを加味するだろう。一番がジョイスのそれであることは決まり切っていて、対抗意識を燃やすのは愚の骨頂だ。  黒々とした瞳が蠱惑的にけぶる。あらためて先端に唇をかぶせてきて、含む。それから、おべんちゃらを言ったわけではないと証明するようだ。ともすれば唇からはみ出すのを両手で捧げ持っておいて、ハネイム王国一の娼婦もかくやとばかりの卓越した舌づかいで、ねんごろに養う。猛りをしゃぶるかたわら、ふぐりを(たなごころ)に包んで撫で転がす。 「おい、悪乗りがすぎるぞ……!」 「でも気持ち、いいよね……?」  忍び笑いが股ぐらにくぐもり、ヴォルフは鼻先をかすめる藤の蔓をたぐり寄せた。だが蔓を()って気をまぎらわせようにも、先端のくびれを吸いしだかれると、ねだりがましげに腰が浮く。  しみ出すそばから雫をすすり取られるわ、舌鼓を打たれるわ、くやしいかな、過剰なもてなしぶりにたじたじとなる。清い身なのを露呈して、快感に酔いしれる余裕があるどころか、爆ぜないように努めるのが精一杯だ。 「……っ!」  幹全体を均すように舐め下ろされて、危うく達しかけた。主導権を握られっぱなしでは沽券にかかわる。そう思い、腕ずくで輝夜を押し倒したまではよかったが、まごつく。  もとより性的な分野に疎い。具体的に何をどうすれば、なめらかに事が運ぶのか、皆目見当がつかない。  参考になるものは、といえば。皮肉なことに輝夜がグレートデーン系のオトコを相手に痴態を演じていた、あれだ。とはいうものの、あれにしても目撃したのはいわゆるの部分で、番う前の肝心のあれやこれやは霧に包まれている。  もどかしさがつのるあまり、ついこう思ってしまう自分が情けない。くだんの夜、もう少し早く茶房を訪れていれば、学ぶべきことを学んでおけたかもしれない。  訝しげな目を向けられて起き直り、しぶしぶ告げた。 「あのな……やり方がわからねえ」 「女性とするときと基本的に同じだけど?」 「女なんか、知るかよ」  ふて腐れた感もあらわにうわずった声が、葉ずれにかき消された。胡坐をかいた中心で、所在なげに屹立しているペニスへと視線が流れる。

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