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第55話

「言い出しっぺの責任をとってもらうぞ」  腕を引き、輝夜を腹這いにひっくり返す。先ほどの草をちぎって汁を指に塗りたくるのももどかしく、核心を暴いた。  ほぐすことに関しては、つけ耳の材料となる髪の毛を(くしけず)る工程を数多くこなすなかで培った手技がある。応用編とばかりに襞をひと片めくり、つぷり、と指を沈めた。  とたんに(なか)がうぞうぞと蠢いて指をもっちりと包み、その感触は、さしずめ()に絡みつくイソギンチャクの触手だ。 「ふ、ぁ、はぁあ……」 「あんた、こんなとこが気持ちいいのか」 「いい……だい、好き……」  掛け値なしに真実だと、いちだんと艶容さを増した表情(かお)が語る。ひとたび招じ入れたからには逃がすものか、と言いたげに内壁がさざめいて指を奥へ奥へといざなう。  熱い、それに狭い、とヴォルフにとっては衝撃の連続だった。不浄の器官をいじることへの生理的嫌悪感はたちまち薄れて、むしろ夢中になる。  柔軟性に富んで、やわやわと指を食みくだく、探索しがいがある(くだ)をとっくりと調べ尽くしたい──と思うほどに。  とはいえ股間に爆弾を抱えているに等しい。のんびりしている暇はない。それでも新しい道具の性能を確かめてみるように、ねっちりと、あるいは性急にくじる。  襞が物欲しげにもぞつくのに魅せられて指を増やした。そうやって浅く、深く行きつ戻りつさせているうちに、指先に違和感を覚えた。硬めに茹でた豆がクリームの中に混じっているような、しこりがある。  興味をそそられて、くっと押したせつな、 「あ、あ……っ!」  シャツをはためかせて、ほっそりした肢体が弓なりに反った。蜜が吹きこぼれて、ぽとぽとと褥にしたたる。 「俺、乱暴にしたか」 「違……今のぷくっとなっているところ、感じる、すごく感じるんだ。きみの立派なこれで……」    猛りを握り取られて、どくんと脈打った。 「突いて、たくさん、突いてぇ……っ!」  濡れ羽色の髪を振り乱してあけすけに要求してこられると、日ごろ物静かなぶんもぎょっとさせられるものがあった。ヴォルフは、淫魔にとり憑かれたような豹変ぶりに度肝を抜かれて、それゆえ不意を衝かれた。  跳ね起きざま、むしゃぶりついてきた躰を受け止めそこねた。それどころか仰向けに押し倒されたはずみに尻尾がおかしなぐあいに曲がり、痛みが走った隙をついて輝夜が跨ってきた。そして雄渾を後ろ手に摑むが早いか陰門にあてがう。  あれよあれよという間に、未だかつて経験したことのない圧迫感にみまわれた。先端がめり込んだぶん襞が軋めいて、今にもへし折られてしまいそうだ。 「……っ!」  ヴォルフは眉根を寄せた。イヌ族の野郎のイチモツはがっついても、俺のこれは拒みやがるのか。じろりと()めあげ、ところが肺腑をえぐられた。  欲望に忠実に振る舞っていた様子からいって、てっきり、けしかけるように微笑み返してくるものだと思った。予想に反して涼やかな目許には苦しげな色が()かれ、べそをかくように顔全体がゆがんでいる。

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