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第56話

 痛々しい、と思った。輝夜が真に欲しているものは、快感とは別の何かなのか……?  もっとも肉欲に躰を支配された状態では、考えはまとまりっこない。奔流が出口を求めて逆巻いている。試みに後ろをまさぐってみると、皺ひとつなく伸び広がって、それでも貪欲、且つ健気に口をぱくぱくさせていた。 「今さら、おあずけはなしだ」  もちろん、と朱唇が紡ぐ。大股開きに下肢を広げると、しゃにむに呑み込もうとする。 「あわてるな、ひしゃげて(いて)ぇんだ」  ヴォルフはバネを利かせて半身を起こした。細腰(さいよう)を鷲摑みに何度か突きあげているうちに、薄ぼんやりと要領がわかった。自身に手を添えて襞をかき分けたほうが狙いを定めやすい。  万全を期して、ぐるりが(ほと)びるほどに例の草の汁を塗り足した。攻め入る角度に微調整をほどこしたうえで、本格的にこじ開けにかかる。 「……ん、ふぅ、まさか筆おろしの相手を務めさせていただくとは身に余る光栄で、きみは痛恨事かな……ん、くっ!」  へらず口を叩くのが可愛く思えて、すべらかな頬をついばんだ。それは媚態、それとも自然な反応だろうか。ともすれば、ずりあがるのを引き戻しながら穿つ。合間、合間に乳首を食むと花びらがめくれてはすぼみ、その周期に合わせて貫いていった。ひとしきりせめぎ合ったが、やがて開かずの扉が開いたように、中ほどまでがずぶりと埋没する。 「ん、あっ、あぁあ……あっ!」 「き、つ……」  肉の環が狭まって行く手を阻む。掘削機の動きを真似て螺旋を描くふうに遡っていけば、背筋が甘く痺れて、飾り毛が逆立った。暴発の憂き目を見そうになって、ぎりぎりのところで持ちこたえると、ふぐりがキュッとせりあがる。  ちろちろと木洩れ陽がまたたくなか、交わりを深めていく。豹族だ、ヒトだ、と線引きするのが馬鹿らしくなる光景だ。 「きみので……あっ、おなかが一杯……!」  ありったけの力でしがみついてこられて、ぎゅうぎゅうと抱きしめて返す。時計回りに襞を巻き取りながら、なおもえぐり込む。射精感がつのり、尻尾がばたついても我慢に我慢を重ねて、突き進むこと数十秒。  ようやく切っ先が最奥に届いた。とたんに筒全体がねっとりと吸いついてきて、たちまち持っていかれそうになった。  互いが、互いに馴染むのを待ちかねて律動を刻みはじめる。殊に輝夜は、しどけなく割り開いた両の足を広い背中で交叉させると、(ほしいまま)に腰を打ち振る。

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