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第121話

 ヴォルフは喉の奥で嗤った。唇で挟んでひねり、いじらしく尖ってきたのを舐めつぶす。残りの乳首にはおあずけを食らわせておいて、ズボンの中心をまさぐってみると、すでに萌している。戯れに撫であげると、連鎖的に乳首がぷっくりと膨らむのがたまらない。  そこで違和感を覚えた。蛾眉が寄り、目縁に紅が()かれて、よがり声がこぼれて当然の場面なのに、なぜか唇は嚙みしめられたままだ。これまでの例でいくと悦びに悶え狂い、あられもないありさまに、こちらがたじたじとなることさえあったのとは大違いだ。  今日は意識的に抑制している節があり、惚れた欲目も相まって初々しい。反面、訝しく思う。 「カマトトぶって、なんのつもりだ」 「違う……本当に、なんだか恥ずかしくて」  そう、つかえつかえ紡ぐと腕で顔を隠す。  乱れまいとすればするほど、いっそう凄艶さが際立つ。ペニスが脈打ち、尻尾も躍る。  ジョイスは特別に除外するとしても、色っぽくも可愛らしい表情(かお)を見たことがあるオトコどもを片っ端から八つ裂きにしてやりたい。独占欲をむき出しに舌で乳首を捉えて、ねっとりと蠢かした。 「おれにもね、一応、年上としての矜持があるんだ。きみに触れたい、触れて()くしてあげたい」  と、いくぶん拗ねた口ぶりで宣言するなり、ヴォルフの下から強引に這い出した。足下の側にずれると、ひと息に下着をずり下ろした。 「……くっ」  解放されたとたん、(へそ)を叩く勢いで弾んだ。間髪を容れず唇が穂先にかぶさってくれば、脳天から爪先まで電気が走り抜ける。  比較する対象はないが輝夜の舌づかいは絶品で、その技を習得するに至った背景を考えると嫉妬の炎がめらめらと燃えあがるものの、それはそれ、これはこれ、だ。 「触れて善くしてあげたい」を尊重しつつ主導権を維持するには……、 「名案が浮かんだぞ」  語尾に含み笑いがにじむ。物問いたげな眼差しを向けてくるのに知らんぷりを決め込んでおいて、輝夜を抱きあげた。すかさず仰向けに寝そべると、向こう向きに馬乗りになる形に、腹の上に載せた。 「公平かつ効率がいい、理想的だろうが」 「きみは、ときどき我がままを言う」  横暴にふるまうのは年下の特権とばかりに乳首を弾いて返す。その指をすべらせていき、ズボンとひとまとめに下着をずり下ろした。  互いの股間が眼前にくるそれは、あたかも二本のスプーンを上下逆さまに並べたような恰好だ。この場では、まさにうってつけの。
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