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第123話

「ん……あ、む。焦らして、あざとい」 「ナカ、ぎゅうぎゅってなって、イイトコを突いてやれねぇんだよ。力、抜け」  ヴォルフはことさら粛々と、指と舌を代わる代わる沈めた。ペニスが切なげにしなって蜜を降りこぼし、それを直接、口で受け止めて素朴な疑問を抱く。  常にも増して芳醇というか、粘っこい。と、いうことは禁欲生活を送ってきたということか……?  結局、つい凄んでしまった。 「あの言い種を思い出すと(はらわた)が煮えくり返るが敢えて訊く。三日に一回はオトコを補給しなきゃ気が狂うとかって、ほざいてただろうが。バタバタしてて、かれこれ半月も間があいて、どうやって禁断症状をごまかしてたか聞かせてもらおうじゃねえか」 「過去に呪縛されていたのが解けたからだと思う。眠っているきみにくちづけると身も心も満たされて、半月が一ヶ月に延びてもきっと平気だった」 「って、熱出してうんうん唸ってるときにか」  首をねじ曲げてすこぶるつきに艶冶な目つきで睨んでくると、 「『俺は丸ごと全部、あんたのものだ』──。おれには分不相応な、でも世界中の金銀財宝を集めた以上の価値がある言葉で、反芻するたび心がふくふくする。当然、くちづけたくなるよね?」    嬌羞(きょうしゅう)を見せて銜えなおす。  先走りが何滴か漏れた。殺し文句を浴びて感動の嵐が胸の中で吹き荒れているというのにやせ我慢を張りつづけて、なんの益がある? ──諾。  (たい)を入れ替えるのももどかしく、下肢を割り開いた。双丘と床の間に太腿をこじ入れて、のしかかって貫く形に持っていったものの天邪鬼な性分ゆえだ。後ろに倒れていくと大の字に寝そべって、うそぶく。 「病みあがりでバテやすいもんなあ。あんたに乗っかって腰を振ってたら、ぶっ倒れるかもで、やり方を工夫しねえとな」    思わせぶりに口をつぐむと、これ見よがしに自身をひとしごきして、やり方の具体例をほのめかした。そして、まな板の上の鯉になり切って目をつぶる。  ひとつになりたいと切望してやまないのは輝夜も同じはず。おあずけを食わせた報いに捨て置かれてそれっきり、ということはない、と思う。  ヴォルフはドキドキ、そわそわと耳をそばだてた。空気が動き、衣ずれより(かそ)けし物音に期待が高まる。あえかな重みが腹に加わるのを待ちかねて、薄目をあけてみた。  怒張を後ろ手に摑み、花芯へと導く光景が、熱情にあふれた視線の先で婉然と繰り広げられる。穂先がぬるみに触れた。卵白を泡立てる要領で、入り口の際をかき混ぜて馴染ませている様子で、くちゅくちゅと襞がさざめく。  この段に来てヴォルフは悔やんだ。主導権を握っているつもりが、焦らされているのは俺のほうじゃないのか?

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