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第125話
やがて内 がうねり、はしゃぎはじめた。それを合図に、ゆるやかに律動を刻みだす。
漆黒の闇をたたえているように黒々とした双眸が、曙光 が穴蔵に射したところを思わせて明るんだ。
輝夜は今までになく意志の強い眼差しを向けてくると、玲瓏とした声で、且つ高らかに言い切った。
「節操なしと、おれを蔑むのは自由だ。だけど自分の心に嘘はつけない。ジョイスを愛していた、ヴォルフ、きみを愛している」
「俺の見せ場を奪いやがって!」
つい力任せにえぐり込んでしまった拍子に昂ぶりをへし折らんばかりの締めつけに遭って、中断を余儀なくされた。
さて王族の婚礼の儀といえば厳かな一方で、華麗に執り行われるのがハネイム王国の伝統だ。
こなた漂泊の旅の途中とあって、王宮の聖堂ならぬ廃坑が舞台で、しきたりに則った式服をまとっているどころか、お互い裸同然。祝婚歌を捧げる狼族の古老もいないが、真実の愛だけはふんだんにある。
ヴォルフは心臓の真上の肌を引っかいた。鮮血を用いて、真心を込めて、朱唇に自分の名を綴る。万鈞 の重みがある豹族の誓いの印こそ、永遠 の愛を誓うにふさわしい。
「ヒトで、八つも年上で、けっこう頑固で、扱いづらい面もひっくるめて輝夜、あんたを愛している。俺は添い遂げる気満々だからな、否とは言わせないぞ」
残響が〝愛している〟〝添い遂げる〟と、類い稀に美しい調べを奏でた。甘美な余韻に包まれるなかで、輝夜は微かにうなずいた。はらはらと涙をこぼして、大きくうなずいた。
つながりを保ったまま、ヴォルフは半身を起こした。魂そのものにくちづけるかのごとく、狂おしく朱唇にむしゃぶりついた。
愛し、愛されていると全身で確かめ合う、これこそ至上の喜びだ。分かちがたく結ばれること以外のことなど、塵芥 と同等のくだらないものと成り果てる。
筒全体がまろやかに熟 れて、抜き差しを繰り返すたびにいやらしく粘膜がさえずる。
俺に跨って、あられもなく腰をくねらせる姿は最高に綺麗でかわいい。そう思うと口許が独りでにほころぶ。普段のきりっとした顔立ちとの落差が、恋に溺れる男ならではのもの。
「にやついて、きみにしては珍し……んっ!」
「名前で呼ぶ癖をつけないと、こうだ」
細腰を摑みなおして突きあげる。実 に照準を定めてすりたてると、蜜がねっとりと糸を引いた。
輝夜は弓なりに上体を反らしていななき、屹立を軸に抱きついてきた。
内壁がうねうねと蠢いて、猛りを押し包んでくれば保 たない。彼我の境目さえアヤフヤになるような熱い抱擁を交わし、情欲に身を任せて、愛する者を貪婪に味わい尽くすのみ。
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