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第126話

「ヴォルフ、ヴォル……あ、もう……っ!」 「イッちまいな、ほら」  抽送に加速がつき、尻尾がばさばさと地面を掃いて拍車をかける。ヴォルフは強靭さにものを言わせて再び(たい)を入れ替えた。  上から叩きつけるように穿ちに穿って、輝夜と共に快楽の(きざはし)を駆けあがる。永久(とこしえ)を約束する、その一環として深奥に精をそそぎ込んだ。  空が緋色に染まりはじめたころ、風花が落ち葉にじゃれついては吹きさらわれていった。冬の使者は坑道にも舞い込み、だが、そこは愛の巣だ。互いの温もりがありさえすれば、氷原でさえ常春の楽園と化す。  ヴォルフは鍋に汲み置いた石清水を、がぶ飲みした。すると鼻が勝手にひくつきだすのにともなって、意識が混濁していた間のいくつかの場面が鮮明に像を結んだ。  ひと束の野草が(たきぎ)の山の横に置いてある。それから漂ってくる香りと、石清水にしみ込んだ匂いは同じだ。  移り香に嗅覚が反応したということは、 「なあ、この鍋で煮出した汁を俺に飲ませたよな。へたばってるときに」  輝夜は、とろんとした目を向けてきた。愛慾の限りを尽くしたあとだけあって、指一本動かすのも億劫な様子だ。濃淡取り混ぜた鬱血が、しどけなくうつぶせた裸身に華やぎを与えている。強めに吸った痕は愛の証しであるとともに、独占欲の現れだ。  股間に違和感を覚えて視線を流すと、我ながら呆れた。つながりを解いていくらも経たないうちから、象牙に紅薔薇をあしらったような艶麗さにそそられて、早くも頭をもたげる始末だ。  勢いに任せて四回戦に突入するにやぶさかでないとはいえ、相手はか弱いヒトだ。努々(ゆめゆめ)、輝夜を壊してしまわぬよう自重しなくては。咳払いひとつ、顎をしゃくって答えを促した。 「水場の近くに生えているのを見つけて思い出したんだ。故郷の村では高熱が出る風土病にかかったとき、この薬草を煎じたものに助けられたことを。だから駄目で元々で、きみにも……」  すかさず睨むと、はにかんだふうにヴォルフと言い直してから言葉を継ぐ。 「とにかくね、口移しで飲んでもらうと熱が下がりはじめた。役得、の面もあったかも」  役得、とヴォルフは鸚鵡返(おうむがえ)しに呟いて赤らんだ顔を搔いた。野草の束を引き寄せて、しげしげと眺める。  ツリガネソウに似て、ただし葉はもう少し尖っていて()が入っている。こいつに解熱作用のある成分が含まれていて、耳欠け病にも効力を発揮する可能性を秘めているというのか……?

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