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第127話

 輝夜の傍らに胡坐をかいた。(ほと)びて、物足りなげに収縮する内奥を無意識のうちにかき混ぜながら思索に耽ったすえに、ぼそりと洩らした。 「あんたの……」  太腿をつねられた。 「痛っ、容赦ねえな。まあいい、輝夜の受け売りでいくと耳欠け病は手のほどこしようがない型と、仮性って感じの型のふた通りあるとか、どうとかって前提はこじつけがすぎるか? 着眼点は悪くない、悪くないどころか本質を衝いてて、治療法を確立するための鍵が隠されてると豹族の勘が告げてるぞ」  内壁が指にまとわりついてくれば、必然的にイチモツがみなぎる。タンクが空っぽになるまで搾り取られて、勘弁してくれ、と白旗を掲げる展開が待っているのだが、それはまた別の話。ともあれ興奮の色を隠しきれない体で、指を行きつ戻りつさせる。 「仮説が正しいと証明されれば、あんた……もとい輝夜はハネイム王国の救世主さまだ。ヒトを迫害してきた連中の鼻を明かす切り札を握ったな」 「わくわくしているヴォルフも素敵だけど、半端に煽るのはやめてほしい……ん……ん」  そ知らぬふりで核をつついて返す。ファンファーレを奏でるように尻尾が揺らめき、ハゲちょろの耳がきりりと立つ。 「種を蒔く、株分けして殖やす、どっちみち薬効成分ってのを抽出するには大量に必要だ。ってことは群生地を探さなきゃで、輝夜のふるさと近辺が有力な候補だ。あした早速、新たな冒険の旅に出かけようぜ……おわっ!」    のしかかってこられて、後ろ向きにひっくり返った。上体を起こしたものの、すでに雄を握り取られたあとだ。 「あのな、俺はいちおう病みあがりだ。安静にしとけって仰せあそばしたのは、どこの誰さんだっけな」  鹿爪らしげにそう言って、尻でいざってずりあがるそばから、荒馬を乗りこなす要領で両の膝が胴体を挟みつけにくる。  残滓がしみ出して狭間を潤し、第二の花筒さながらのそこに屹立がいざなわれて細腰が前後すると裏筋に淫らな摩擦が加わるわけで、要するに思う壷。 「旅立つ前の景気づけにもう一回、ね? 体力を温存しておくべきだなんて野暮なことは言いっこなしだよ」  子種の残量を量るように、後ろ手にを弾ませつつ輝夜が白い歯をこぼす。  ヴォルフはため息をつき、その実、笑み崩れる寸前だった。たおやかな見た目に反して勇敢で、才知に長けて、そのうえ床上手。男冥利に尽きる最高の伴侶を得たわけで、幸せの極致だ。  寸暇を惜しんで抱き合う、これぞ蜜月の醍醐味だ。ちなみに諸般の事情によって、出立は翌々日に持ち越された。

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