「しぇ、しぇか……しぇからーと……？」 「あ、それ酒だけど大丈夫？」 「えっアルコール入ってんすか？　俺ふつーのコーヒーがいいんですけど……」 「じゃあエスプレッソでいい？」 「あ、はい」 「すいませんエスプレッソふたつ」 「オシャレメニュー全然わかんないんすよ、ダメですねふだんチェーン店しか行かないから」 「まあチェーンのが安いしな、俺も普段はチェーンばっかだよ」 「でも高岡さんこういうオシャレな店いっぱい知ってますよね」 「いや……俺もそんなに来ないけどね」 「こーゆーとこにさらっと連れてくる感じいいなー、かっこいいなー」 「……」 「彼女とよく来るんですか？」 「え、あ、いや彼女いないし」 「前の彼女と別れたのいつですか？」 「えー……、わかんね、結構前……かな……」 「高校ん時とかですか？」 「ん……まあ……そんな感じかな……？」 「作んないんですか彼女」 「んー……今は別に……」 「もったいねー、高岡さん絶対モテてんのに」 「いやモテねぇよ」 「いやー、高岡さんかっこいいんだし直接言ってこないだけで絶対好きな女の子いると思いますよ」 「……」 「今いー感じになってる人とかいないんですか？　気になってる人とか」 「えー……、なんでそんな色々聞くの」 「やー、そういや高岡さんとこういう話したことないなーと思って。いや全然スルーしてもらっていいんですけど」 「……いるよ、気になる人」 「え！　まじすか！？」 「声でか……」 「すいません！　いやすいませんびっくりした、高岡さんのそういう話聞くのすげぇ新鮮！」 「そうかな」 「え、え、俺知ってる人ですか？」 「あー……んー……どうだろ」 「微妙なライン？　ってことはうちの学校の人ですね！？」 「まあ……うん、そうなるな」 「えっどんな人ですか！？」 「んー、なんかうるさい」 「うるさい人？」 「そう」 「かわいい系？　キレイ系？」 「かわいい」 「かわいい系でうるさい人？　えー誰だろ……」 「めちゃめちゃかわいいよ。こんなかわいい子ほかにいないわってくらい」 「えっちょ、ベタ惚れじゃないですか高岡さん！」 「……うん」 「……え、なんでそんな照れてんですか」 「いや……、こういう話慣れてないから恥ずかしくなった……」 「ははっ！　やべー高岡さんちょーかーわいー」 「……」 「かわいい系でうるさい人か……えー……いっぱいいそうだなー」 「……ついでにいっこ、恋愛相談していい？」 「あ、はい、全然いいですよ！　どんどんしてください！」 「その子が頻繁に俺のことかっこいいとかかわいいとか言ってくるんだけど、どういう心理なんだと思う？」 「えー、相手も高岡さんのこと好きなんじゃないですか？　それで気ぃ引こうとしてるみたいな」 「いやそれはないんだよ、その子俺の気持ちまったく気付いてないし」 「まったく？」 「まったく。全然。一ミリも」 「へえー、そういう系のことなんも考えてないタイプなんすかね」 「……そうかもな」 「イケメンに好意もたれてたら悪い気しないだろうし嫌でも意識しそうなもんですけどね、鈍いんですかねその人」 「……よく分かってんじゃん」 「え？」 「いや、その子がね、ほんとに鈍いんだよ。そこがかわいいんだけどさ」 「へぇー、その子こういうとこ連れてきてみたらどうですか？」 「……」 「高岡さんみたいな人に誘われてこういうとこで二人っきりになったらどんなに鈍くてもさすがに気づくと思いますよ」 「……無理だな、気付かねぇよ」 「そうですかねぇ」