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第3話

 ソファへ横になると、二人はもつれ合うようにして抱きしめあった。  ジークの燕尾服が皺になるとか、そんなことはもうどうでもいい。ただお互い触れたい気持ちが溢れて、牧人はジークの胸……ちょうどコアのある辺りに顔を埋めた。 ジークが自分の頭を抱き込んで、呼吸を荒らげている感触が心地いい。 「ハァッ、ハ……牧人様の匂い、すごく……気持ちいい、です」 「ハハッ何だよそれ……変態くさ」 「……不快でしたでしょうか?」 「いんや、良いんじゃねーの? いっつも完璧に執事業こなすお前に、こんな無防備な一面あったとか。しかもそれを知ってるのが自分だけとか……マジで興奮する」 「ッ!? ……ま、牧人様、それは何を」 「ん? 俺に触れたいんだろ、もっと直接触れよ」  銀色に光る右手を掴み、牧人は自分の上着の中へ招き入れた。  金属なだけあって、触れたところがヒンヤリする。しかし今はその冷たい体温でさえ、十分な興奮材料だ。 「分かるか? ここ、さっきお前に聞かせた鼓動の源。この下に心臓がある」 「存じて……おります。(わたくし)は執事型ヒューマノイド。マスターに万が一のことがあった場合を考慮し、人体の仕組みや応急処置、医学の基礎的な部分に関してはデータをダウンロードされていますので」 「ああ、そうだったな。俺がガキの頃、怪我したときなんかによく治療してもらったっけ。……じゃあ、ここは?」  上着から手を抜き取って、今度は下腹部へと移動させる。 「なぁ、ここ。分かるか?」 「は、はい……」 「どうなってる?」 「ッ……硬く、なっておられます」 「ハハッ、『おられますって』。……じゃあ問題、男性器の役割は?」 「うぅ……こんな時にそんな質問、意地が悪いです!」 「良いから答えろよ。命令だ」 「男性器とは……主に排尿、男性ホルモンの分泌、あとは……精子の生産と、その……」 「硬くなる理由は?」 「せ……性的興奮などにより、射精欲求が高まっているから……」 「よくできました」  ジークと目線の合う位置へ移動すると、サラサラした金髪を手櫛(てぐし)で撫でてやる。 「つまり今俺は、ジークに欲情してるってわけだ。そこで質問なんだが……ヒューマノイドにもセックスの概念、あるわけ?」  自分の口から出た言葉にまだ赤面しているジークへ、さらなる質問を畳み掛ける。  まだ恥じらいの残る口調で、執事は応えた。 「発注者の意向により、そういう機能が施されない個体は……存在します」 「で、お前は?」 「……一応、愚息が一人」 「じゃ、お前が俺を抱いてくれよ」 「……ハイ?」  困惑するジークに構わず、一度ソファを立った牧人は作業台の引き出しを開けると、何やら透明な液体の入ったボトルと、奇妙な形をしたプラスチックの物体を手にして、再びソファへ戻る。 「ジークこれ、何か分かるか」 「……皆目見当も付きません」 「ローションとアナルプラグ。──つまり、そういうことだよ」

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