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第14話
ついに戦いの火蓋 は切って落とされた。
まずは蓮人、雄河は別室にて決められた時間内に作品を仕上げ、それらを名を伏せて著名 な華道家達に、どちらが秀逸 か投票してもらう。
その人選は長谷川家の意見も取り入れ、あくまで公平を期すよう態勢 を整えた。
そして。
以前と同じように、高瀬家の応接間にて、剛健、美代子が座している前に、蓮人、春樹、雄河の順に並んでいる。
荘厳 な空気が漂い、呼吸すらもためらう程だった。
(自信はある。大丈夫。絶対に大丈夫)
蓮人はそう自身に言い聞かせつつも、緊張で口内は渇ききり、額には冷や汗が滲 んでいた。
対照的に雄河は至って平然とした様相で、既に勝利を確信しているかのようだ。
いや、そんな訳がない。
そんな訳が。
するとふと、春樹と目線が合い、
『蓮人。絶対大丈夫だから』
他の者達には分からぬよう、彼の口が小さく動いた。
声は出ていないが、恐らくこう言っている。
その表情は凛としていて、心底こちらを信じきっているようだった。
それを見て、ようやく肩の力が抜ける。
(そうだ。俺は絶対に、勝つ)
蓮人の瞳に、輝きが戻る。
見計らったかのように、剛健が大きく咳払いをし、
「さて、雄河くんと蓮人。二人とも素晴らしい出来だった。投票してくれた方々も、甲乙つけがたいと悩んでらっしゃった。私自身も、かなりの時間を費やした程だ」
「本当に。私も、困ってしまいましたわ」
美代子の軽やかな声が、場を和ませる。
二人ともお世辞ではなく、本音であることを窺 わせた。
しかし、所詮 は結果が全て。
蓮人はゴクリと唾を飲み込み、審判 の時を待った。
剛健は滔々 と続ける。
「だが、どちらか決めなくてはならない。我々も他の方々も苦渋の決断ではあったが、決めさせてもらった。その結果はー」
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