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第22話
「あぅっ!」
背中に鈍痛が走り、思わず声が漏れる。
直ぐに起き上がろうとするも、雄河が馬乗りになってきて敵わない。
スプリングが軋 む音が、鼓膜を揺さぶった。
何をされようとしているのか。
容易に想像が出来て、悲鳴を上げそうだった。
案の定、雄河は怪しげな笑みを浮かべ、
「さ、俺達の子供を作ろう。そうすれば誰も文句は言わないだろう。蓮人だって諦めてくれる」
恐ろしいまでに淡々とした、抑揚 のない口調。
その癖抵抗するのは許さない、と脅されているかのような威圧感があった。
春樹は慄然 とし、駄々 をこねる幼子みたく全身を使って暴れ、
「やめろっ!!!こんなこと、間違ってる!!!」
と訴えかけるも虚しく、首輪によって拘束 されている身では、どうしようもない。
雄河もこちらの言動など全く意に介してない様相で、荒々しく浴衣を乱した。
まだ何者にも汚されていない、ピンク色に染まった胸の突起 が現れ、春樹はカッと顔に熱が集中する。
「ああ、想像どおりだ……綺麗な色をしている。なのに敏感そうで……本当にそそられるな……」
「ひっ」
生温かい感触が突起を包み込み、春樹は思わず声を漏らした。
雄河はチュクチュクチュク、とわざとらしく音を上げ、それを執拗 に舐め回す。
(蓮人にも、……触られたこと、……ねぇのにっ……!)
あまりの不快感に、自然と涙が溢れた。
蓮人の美しく、穏やかな笑顔が脳裏に浮かぶ。
彼以外の人間に犯されるのか。
そもそももう、二度と会えないかもしれない。
そう考えたら底知れぬ悲しみと恐怖で、気が触れてしまいそうだった。
雄河はこちらの心情など露知らず、恍惚 とした様子で、
「相変わらずこの浴衣、よく似合ってる。覚えてるか?初めて会った時に着ていたんだよ、春樹。緊張していた俺に、笑いかけてくれた……その時から、ずっと俺は……」
「……そんな、……俺のこと、散々馬鹿にして……」
「愛してるからこそ、痛めつけたくなるんだよ。ま、蓮人に関してはただただ憎かっただけだがね」
到底理解出来ぬ雄河の思考に、ただ愕然とするばかりだった。
自分がどれだけ傷付き、苦しんできたか想像もしていないのだろう。
憤 りよりも、その身勝手さに震えるしかなかった。
するとー無理矢理足を開かされ、隙間から性器と秘部が晒 されて。
春樹は半狂乱になって、喉が張り裂けんばかりに叫んだ。
「やだっ!嫌だ嫌だっ!!!」
涙ながらに拒んでも、体格のいい雄河には太刀打ち出来ない。
成人男性にしてはかなり陰毛が薄く、未だ少年のような形状の性器と、誰にも触れられていない、自慰 すらしたことのない淡い朱色の秘部に、雄河は興奮を隠せないようだった。
「もしかして……蓮人どころか、自分で触ったこともないのか?」
ズバリ指摘され、グッと唇を噛み締める。
それは『イエス』と白状したも同然だった。
とにかく性に対して疎 い春樹は、自身で弄ることも滅多になかったのだ。
だからこそ容貌 も、未だ幼さが残っているのかもしれない。
雄河は卑 しく舌なめずりをし、……下半身に手を伸ばしてきた。
「!やだ!いやあああーっ!!!」
無駄だと分かっていても、渾身 の力で雄河を振り払おうとすると。
思い切り頬を打たれ、髪の毛を鷲掴みにされた。
意識が朦朧 とし視界が霞む中、恐ろしい鬼の形相が見える。
「大人しくしろ。萎えるだろ?両手両足を折ってもいいんだぜ。あ?」
「うっ、うぅっ」
これ以上抗ったら、雄河の暴力は激化するに違いない。
最悪、命すら危うくなるかもしれない。
そうなれば、本当に蓮人に会えなくなる。
完全に望みが絶たれてしまう。
春樹は瞼を固く閉じて、覚悟を決めたように動きを止めた。
(蓮人、蓮人)
まるでおまじないの如く、愛おしい人の名を反芻 する。
雄河のジッパーを下ろす音が、耳にこびりついて離れなかった。
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