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第24話
何とかしてここから脱出出来ないものか。
暫し悲しみに打ちひしがれ、だが少し平静を取り戻すと、春樹は現状を脱することを考え出した。
前述したとおり、置かれた環境はかなり厳しい。
首輪はどんなに掻きむしっても外れないし、何度確認しても抜け出せそうな箇所はない。
天井やユニットバスに排気口が設置されているが、到底成人男性が通れる大きさではなかった(そもそも首輪に繋がれている限りどうしようもないが)。
それでも藁 にも縋 る想いで、それらに向かい、
「誰かーっ!聞こえませんかーっ!?閉じ込められています!助けて下さい!!!」
何度も何度も、ありったけの声を張り上げるも、やはり周囲は静謐 そのものだ。
次に何処か抜け道はないかと、手の届く限り壁や床をひたすら叩き続けたが、微動だにせず。
次第に手の皮が捲 れあがり、血が滲んで諦めざるを得なくなった。
(クソッ……どうすりゃいいんだ……)
打開策が見付からず、途方に暮れた春樹は、暗澹 たる気持ちを抱えて、ベッドの上で膝を抱えうずくまった。
本当に、このまま。
雄河の『ペット』になってしまうのだろうか。
蓮人と会えずに、命が尽きるのか。
「んなの……嫌だよぉ……」
春樹は再び嗚咽を漏らし、肩を震わす。
こんなことになるなら、ちゃんと。
『大好き』だって、『愛してる』って伝えておけば良かった。
そう。
まだ口にしてなかったのだ。
蓮人からは沢山与えて貰ったのに。
何一つ返せてやれなかった。
「うっ……うぅっ……ひっ……れん、と……」
会いたい。
会ってうんざりされるくらい、『大好き』『愛してる』って言いたい。
きっと蓮人は綺麗な瞳を一瞬見開き、破顔 して、ギュッと力強く抱き締めてくれるだろう。
あの肌に馴染む、心地好い温もりを思い出し、だがもう二度と味わえないかと想像すると、底知れぬ哀しみが強襲 してくる。
「蓮人……好き……大好き……愛してるっ……」
届かないと知りつつも、呪文のようにそう呟いた途端。
ガチャリ、とドアノブを回す音が響いた。
春樹はビクリと後退 りし、荒い呼吸を繰り返した。
(ど……しよ……雄河が……帰ってきたっ……!)
先程の台詞が脳裏を過る。
『帰って来たら直ぐに続きをしよう。俺達の子供、きっと可愛いぞ。楽しみにしてる』
嗚呼。
もう逃げられない。
春樹はせめてもの抵抗として、顔を膝に埋め、貝殻 の如く丸まった。
可能な限り時間稼ぎが出来るように。
そしてードアは、開かれた。
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