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第27話
「俺っ……もう離れ離れは嫌だっ!!!」
春樹がそう叫んだ瞬間。
蓮人の動きが、ピタリと止まった。
暗示にかかったかのように。
全身が硬直し、何もない空を見据えている。
この好機 を逃すまいと、春樹はここぞとばかりに畳み掛け、
「蓮人ともう二度と会えないかもって……想像しただけですっげぇ怖くて、辛くて……助けに来てくれた時、めっちゃくちゃ嬉しかった……もう離れたくないって、絶対に離れねぇって思った……なのにっ、こんな奴のせいでっ……俺の、せいで……蓮人が犯罪者になるなんてっ……嫌だぁ……!」
「……!」
次第に嗚咽混じりになる言葉に、やっと。
虚ろだった蓮人の瞳に、光が灯った。
徐にこちらに目線を向け、涙にまみれた顔を凝視 する。
春樹はひっくひっくと、しゃくりあげながら、
「れ、蓮人……好きだ……大好き……愛してる……だから……傍から居なくならないでっ……頼む……!」
憂 いを孕んだ声が、波紋 の如く辺りに反響する。
泣き崩れる春樹を前に、蓮人の手からナイフが零 れ落ちる。
その隙を見て雄河が殴りかかろうとしたが、直ぐに気付いた蓮人に数発鉄拳を食らい、整った顔が無惨に腫れ上がってしまった。
「クソ……春樹は、……俺の、だ……俺の……」
意識を失ったらしく、白目を剥いてグタリと首が捻 れた。
蓮人はベルトを外して雄河を縛り上げた後、こちらへ駆け寄って、
「春樹さん……ごめんなさい……不安にさせて……守れなくて、……ごめんなさいっ……!」
「蓮人……」
(いつもの蓮人だ)
優しくて穏やかで、まだちょっぴり子供な、いつもの蓮人。
そう分かった瞬間、安堵のあまりとてつもない虚脱感 に襲われ、床に倒れ込んだ。
張り詰めていた糸が切れたのだ。
「は、春樹さんっ!春樹さんっ!!!」
蓮人の悲痛 な叫び声が、遠くから聞こえてくる。
心配すんな。
ちょっと疲れただけだから。
これだけの台詞すら口に出来ず、春樹は。
静かに瞼 を閉じて、深い眠りへと身を投じた。
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