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第30話
要因は火を見るより明らかだった。
まず春樹は『そういう雰囲気』になると、分かりやすく避けるようになった。
普段は変わらず屈託のない、無邪気な笑顔を見せているが、ふとした拍子に艶やかな空気が流れたら、「あ、あ、じゃ、もう寝るなっ!お休みっ!」と自室に行ってしまう。
(あんなことがあったんだから、怖がって当然か)
と蓮人は自身を慰めるも、何せ色々と『お盛ん』な年齢なので、我慢するのはなかなか至難 の技である。
だけでなくこちらはこちらで、経験が皆無なものだから、どうしたら春樹を傷付けずに結ばれるか、猛勉強している最中だった。
あれだけ凄惨 な目に遭った彼を、もう二度と怖がらせたくない。
性的な行為に、悪い印象を植え付けたくない。
その一心で。
(とは言え……焦りがないと言えば嘘にやる……)
そう。
ふとした瞬間に、雄河のあの台詞が脳裏に浮かんでしまうのだ。
『まぁお前には無理か。まだセックスすらしてないんだから。春樹の『アソコ』だって見たことないんじゃないか?前も後ろも。あまり毛も生えてなくて、まるで子供みたいだったぞ。そりゃあ男をたらし込める訳だ』
「くそっ!!!」
思い出すだけで、腸 が煮えくり返りそうだった。
当人には伝えていないが、医者から春樹の身体に微量の唾液が付着していたのは聞いている。
挿入はされていないものの、間一髪 だったであろうことは、想像に難 くない。
(あんな奴の記憶なんて、早く消し去ってやりたい。俺の身体で上書きしたい……!)
と蓮人が息巻くのも当然だろう。
だが、無理強いはしたくなくて。
愛情と欲望の狭間で、延々と葛藤 を繰り返していた。
そんな中二人は剛健と美代子に呼び出され、意外な提案をされた。
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