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第40話

「うぅっ!」 春樹が呻いたので、蓮人は咄嗟に動きを止めた。 まだほんの先しか入っていないが、指よりもずっと苦しかったのだろう。 眉間に皺を寄せ、唇を噛み締めているその姿を見て、罪悪感(ざいあくかん)に襲われる。 「大丈夫ですか?止めますか?」 無論この状態で中断するのは、こちらとしてもなかなか辛いが、春樹の身体を一番に優先しなくては。 しかし彼は激しく首を横に振った。 「やだ……続けて、くれ……」 「でも……」 「蓮人のものに、早くなりたい……俺はお前の……『嫁』になるんだから……」 ……油断していた。 ガーンと、鈍器で頭を殴られたかのような、強い衝撃を受けた。 春樹の自分への愛情が、ひしひしと伝わってきて。 情けないことに、目頭に熱を帯びる。 だがここで泣き出しては、男が(すた)る。 蓮人は引き攣りながらも笑顔を作り、 「ありがとうございます。俺……辛いこともいっぱいあったけど……今、めちゃくちゃ幸せです」 「蓮人……」 「ゆっくり、ゆっくり進みますね」 「うん……」 蓮人は込み上げる涙を抑え、本能に惑わされないよう自制しつつ、中を突き進んでいった。 そこは熱く、深く。 凄まじいまでの快感を与えてきて。 (ヤバい……耐えれるか……!?) と危惧(きぐ)する程だった。 物理的な要因だけではなく、ずっと想いを寄せていた春樹の中にいるという、精神的な背景も相まって、より感じやすくなっているようだ。 こんな一瞬で達してしまっては、それこそ情けない、いや惨めですらある。 蓮人は何とか堪え、ほぼ全てを中におさめた。 春樹はこちらの背に手を回し、必死に(すが)りつきながら、 「あっ、はぁっ、蓮人っ……!入った?全部入った……?」 「はいっ……入りました……俺達、今、一つになってます……!」 「な、なぁ……気持ちいい……?」 潤んだ瞳で、上目遣いで。 今まで経験し得なかった圧迫感で、相当苦しいだろうに。 健気にも訊ねてくる春樹の頭を、蓮人は何度も繰り返し撫でた。 少し固めの感触が心地好い。 「ええ。凄く、凄く気持ちいいです。こんなの初めて」 敢えてストレートに伝えると、春樹は嬉しそうに破顔した。 目尻に刻まれる皺が愛おしく、思わず指先でなぞる。 (どうしてこんなに無垢なんだろう) この世の誰よりも。 神聖化(しんせいか)し過ぎているかもしれないが、心底思う。 蓮人は慈愛(じあい)に満ちた眼差しを投げ掛け、ギュッと彼を抱き寄せて、 「動きますね……」 無理のない範囲で、腰を前後に動かし始めた。 微かに鳴る肌と肌が弾ける音が、二人の耳を濡らす。 「あっ、あぁっ!んっ!」 春樹は瞼を頑なに閉じ、受け入れてくれたものの、残念ながら性器は()えている。 やはり初めから『後ろ』で快楽を得るのは、難しい様相だ。 苦悶(くもん)の表情を浮かべる彼に、少しでも気持ち良くなって欲しくて、蓮人は先程と同様に胸の突起と性器に刺激を与えた。 「ふぁ!?あっ、やらっ」 途端に春樹は目を見開き、咄嗟に性器を扱くこちらの手を払い除けようとする。 が、その力は弱々しく、到底敵わなかった。 キュッと秘部が狭まり、一気に締め付けられて、蓮人はほくそ笑む。 「やっぱりこれ、気持ちいいんですね。中が締め付けられた」 「ば、ばかっ!んなこと言うなっ……あんっ!」 「俺も同じですよ。春樹さんも気持ち良くなって欲しいんです。……一緒にいきましょう?」 「ん、んんっ!れん、とっ……!」 蓮人は濃密な口付けを交わしながら、丹念に愛撫を施し、腰の動きも止めなかった。 彼の性器は再び膨張(ぼうちょう)し、中の締め付けが一層酷くなって、絶頂が近いことを知らしめる。 「あっ、あぁっ、れんとっ、蓮人っ……!好き、大好きっ……!」 「俺も、大好きです、愛してますっ……!」 「あっ、らめっ、またいくっ、いっちゃう!」 「いきましょう、一緒にっ……!」 「あっ、あぁあああーっ!!!」 春樹は絶叫に近い嬌声と共に、精液を辺りに飛散(ひさん)させた。 と同時に中が激しく収縮し、蓮人も全てを吐き出す。 出会ってから10年以上の時を経て、ようやく結ばれた瞬間だったー。

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