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第43話
初めの一年は、呑気に構えていた。
むしろ「まだ二人の時間が欲しいよな」と話していたくらいだった。
周囲に祝福されつつ結婚式を開き、無事に入籍を済ませ、実家住まいではあるが、離れで二人で暮らすことになって。
穏やかで、温かい日常を過ごしていた。
蓮人は高校を卒業した後、本格的に剛健の元で腕を磨いて、今ではあらゆる賞を総なめにし、自身で教室を運営するまでに成長していた。
加えてあの容姿だ、案の定更に世間から注目され、そんじょそこらの芸能人よりも高い人気を誇っている。
春樹はそんな彼を影ながら支え、精一杯家事をこなし、教室の経理等も請け負っている。
「春樹さんはただ側にいてくれるだけでいいんですよ?笑っていてくれたら、俺は幸せです」
などと蓮人は歯の浮くような台詞を、あっさりと言ってくるが(しかも凄まじく綺麗な笑顔で!)、そうは問屋が卸さない。
やはり『夫夫』というだけで揶揄してくる輩も居る中、お飾りの伴侶でいる訳にはいかなかった。
(少しでも蓮人の役に立たなきゃな)
と、常に自身を鼓舞していた。
そうして一年が経ち、さすがにそろそろ子作りを始めよう、という流れになって。
毎晩のように、濃密に愛し合った。
貪 るかの如く絡み合い、大量の精子を体内に注ぎ込まれた。
蓮人の行為は優しくも激しく、若いだけあって体力も有り余っており、際限なく求めてくる。
「春樹さん、愛してます……他の誰にも絶対に渡さない……ずっとずっと一緒に居て……」
相変わらず執着心が凄まじく、時折ゾクリと背筋に冷たいものが走るが、と同時にその束縛が心地好くもあり、春樹は密かに満悦 している。
(早く蓮人の子供を産んでやりたい)
誰よりも愛おしい人の子供を。
そう幾度も願うも、……現実は残酷なもので。
なかなか授からないまま、あっという間に二年目を迎えてしまった。
そして徐々に、ゆっくりと。
真綿 で首を締めるように、春樹は追い詰められていった。
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