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第49話
「おお、蓮人。御手洗さんはー」
と春樹が言い終わるよりも早く、蓮人は莉那との間に割って入り、彼女に鋭い目線を投げ掛けた。
突然のことに頭の上に『?』が浮かび、キョトンと首を傾げる。
彼は憮然 とした表情のまま、
「莉那。俺はともかく、春樹さんに無礼は止せ。高瀬家の実のご子息なんだから」
「はいはい。嫉妬させちゃって、申し訳ありません!」
「なっ」
どうやら莉那の方が、一枚も二枚も上手らしい。
図星だったのか、蓮人は珍しく狼狽 し、耳まで真っ赤になっていた。
(……蓮人が、嫉妬……)
そう思ったら、ほかほかと。
全身が温かくなってきた。
妹的な存在である莉那にまで嫉妬するって。
(俺のこと、めちゃくちゃ好き……なんだな……)
恐らく想像している以上に。
そう考えたら、悩んでいるのが馬鹿らしくなってきた。
嬉しさのあまり、顔を綻ばせる。
それを見た莉那は、安堵したようにホッと息を吐いた。
「では、邪魔者は消えますので。蓮人様、春樹様を大切に、たいせつ~にして下さいね」
「言われなくても、春樹さんは誰よりも大切だから!」
同世代の莉那には、どうもムキになってしまうらしい蓮人。
すれ違いざまに彼女は、さりげなくウィンクしてきた。
もしかしたら全て計算だったのかもしれない。
自分に彼の気持ちを知らしめる為の。
(ありがとう、莉那)
一人感慨 に耽っていると、ギュッと抱き締められ、激しく心臓が鼓動 する。
「……やっと二人きりになれましたね。……嬉しい……」
「蓮人……御手洗さんは?いいのか?」
「今は休憩中です。もう、春樹さん不足で倒れそうでした。やっと話し掛けようとしたら、莉那とイチャついてるし」
「バーカ。莉那は俺らにとって妹みたいなもんじゃん」
「分かってますけど……春樹さんに触れていいのは、俺だけです」
蓮人は子供のように嫉妬心を剥き出しにしている。
それが堪らなく愛おしい。
春樹もまた彼の背を握り締め、胸板に顔を埋めた。
「……蓮人に触っていいのも、俺だけだからな?」
「当然です」
「ふふっ」
そして額と額を合わせ、微笑みを交わす。
甘ったるい、幸せいっぱいの時間を味わえて、春樹は満たされた。
その光景を玲美が恨めしげに睨み付けているとは、知りもせずに。
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