56 / 83

第55話

戻って来た莉那に礼を言い、何かに追われているかの如く、二人で急いで自宅へと帰った後。 「セックスしましょう。子供とか気にせずに。ただただ貴方を愛したい」 蓮人にそう言われ始まったセックスは、だがさすが『お仕置き』だけあって、なかなか過酷(かこく)だった。 とは言え痛みなどは一切なく、ひたすら快楽を追求するものだったが。 彼は何度も何度も何度も(強調)、春樹の性器や秘部を扱き、いじり、絶頂へと誘って。 終わりが来ないのではないか、と危惧する程だった。 初めは白濁していた液が、次第に透明に近くなり、恥辱で頭の中が真っ白になる。 「は……はぁ……れ、蓮人……も……きつ……い……」 「『お仕置き』ですからね。……でもちょっとやり過ぎました、すみません」 「あ、謝るくらいならやんなっ!……ま、まぁ、気持ちいいから、いいけどよ……」 そう。 セックスでこんなに高揚したのは、実は久しぶりで。 最近は愛を確認する為ではなく、子作りの為にしていたのだと、思い知らされた。 (きっと蓮人も辛かったよな……) 彼はどんな時でも励ましてくれ、慈愛に溢れた眼差しで見守ってくれていたが。 内心はあらゆる葛藤(かっとう)があったと思う。 なのに自身を悲劇のヒロインに仕立て上げ、それを蔑ろにしていた。 ゆっくりと、その少し痩けた頬に手を伸ばし、 「……本当にごめんな。色々心配かけて」 「俺の方こそごめんなさい。春樹さんがそこまで追い詰められてるって、気付かなかった……これからは毎日、もっと、もーっと愛情を伝えますね」 「ははっ。ばーか」 時折見せる幼い、年相応の顔が愛らしい。 思わず含み笑いをすると、蓮人は突然双璧(そうへき)を指で押し開き、秘部をマジマジ見て、 「うん、すっかり俺の形になりましたね」 ……前言撤回。 そう満足げに呟く蓮人の表情は、イケメンでしか許されないものだった。 玲美も彼の変態性を知れば、諦めるかもしれない。 しかし春樹としては、自分にしか見せない一面なので、優越感を覚える。 「そりゃそうだろ。お前しか入れてねーんだから」 「ふふ、嬉しいです。……本当に、いつまでもピンク色で、ヒクヒクしてて、可愛い……毛がなくてツルツルだし」 「んっ!」 こんなとこに可愛いも何もあるか!てか毛が薄いのはむしろコンプレックスなんだぞ!とツッコミたいところだったが、熱のこもった先端を宛がわれ、瞬時に言葉が引っ込んだ。 ドクンドクンドクン。 もう数え切れないくらい、結ばれているというのに。 未だに胸が高鳴る。 蓮人が欲しいと、中が淫らに(うごめ)いているのが分かる。 (そっか……俺もずっと……) ただ純粋に、ありのままに。 彼と繋がりたかったんだ。 そう自覚した瞬間。 奥まで一気に突き上げられ、春樹は悲鳴に近い嬌声(きょうせい)を上げた。 「ひぁああぁっ!!!」 すっかり敏感になっていた身体は、突然の刺激に激しく反応し、入れただけで萎えていた性器が復活した。 いや既に軽く絶頂したのか、微かに痙攣が起きている。 その様を見て蓮人は悦に入り、 「可愛いですね、春樹さんは……入れただけでイッちゃった」 「は、はぁ、あっ、あぁ」 「ビクビクしてるの、凄く好きです。もっと、もっと見せて」 「あああっ!!!」 まだ動きが止まらない内に、容赦なく中を掻き回され、思わず目を見開く。 春樹は息も絶え絶えに、 「だ、だめっ、まだイッテる、イッテるからぁっ」 と訴えかけるも、蓮人はあっさり却下した。 「大丈夫ですよ。今度は一緒にいきましょう」 「あっあんっ!あぁぁうっ!!!」 今まで感じたことのない、身体の奥の奥まで繰り返し突かれ、駆け巡る快楽に気が狂いそうだった。 (やべ……気持ち……良すぎるっ……頭が……おかしくなるっ……!!!) これからどうなってしまうのか。 未知の領域へと達するのか。 不意に恐怖に襲われ、ギュッと蓮人の首に腕を回すと。 彼は全てを汲み取ったらしく、優しく頭を撫でながら、 「俺に任せて。平気だから」 「うっ、……うんっ……!」 狡い。 こういう時、蓮人はため口で(さと)してくる。 安堵する落ち着いた、父性すら感じさせる口調で。 春樹はいつもそれに(ほだ)されるのだ。 「そろそろ出すよ。春樹さんの一番奥にっ……!」 「お、おぉっ、はっあっ!あぁあああーーーっ!!!」 「くっ……!」 蓮人の艶っぽい呻きと共に、再び絶頂を迎えた。 尿に似た透明の液体が勢いよく噴射(ふんしゃ)し、だがそれを疑問に思う余裕は残されていなかった。 体内の果てに放たれた熱い液体を感じ、興奮のあまり痙攣が治まらず、目線が定まらない。 それでも。 全身が愛情に包まれているようで、幸福感に満ちていた。 「春樹さん……愛してる……愛してる……」 「ん……俺……も……」 心地好い子守唄みたく、蓮人の睦言を聞きながら。 春樹は静かに瞼を閉じた。

ともだちにシェアしよう!