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第64話

古めかしい遊具が並ぶ庭に、家庭的なデザインの建物。 蓮人は懐かしさのあまり、自然と笑みが溢れた。 (全然変わってないな) ここは、生まれ育った養護施設(ようごしせつ)だ。 以前は頻繁に訪れていたものの、顔が売れてからは迷惑がかかる為、寄付だけになってしまっていた。 『蓮人、一度この家、いえ春樹と芽から離れなさい。そうね、久しぶりに養護施設に泊まらせてもらったらどうかしら』 美代子の突拍子もない提案に、蓮人は直ぐには頷けなかった。 春樹も驚きのあまり、言葉も出ない様子だった。 彼女はしかし、ニッコリと満面に笑みを湛えて、 『離れてみて分かることもあるのよ。大丈夫、春樹のフォローは私がするから。仕事だって何とでもなるわ。何日でもゆっくりして来なさい』 とスマホまで取り上げられ、半ば強引に送り出されて今に至る。 春樹とゆっくり話す機会もなく、何も進展がないまま出発したので、全く気が休まらなかったが。 いざ到着すると、さすがに胸に込み上げるものがあった。 門前にあるインターホンを押すと、懐かしい、中年の女性の声が聞こえてくる。 『はい、蓮人くん。お久しぶりね』 施設長の、小山田 香苗だ。 美代子から経緯(けいい)を伝えられているらしく、普段どおりの穏やかな声色をしている。 蓮人の方が何だか緊張してしまい、 「お久しぶりです。突然すみません。お世話になります」 『どうぞどうぞ。今、皆と迎えに行くわ』 皆、とは入居している子達だろう。 こちらには18歳までの、あらゆる事情を抱えた子供達が生活している。 かつては自分もその内の一人だった。 当時を思い出したら、郷愁が込み上げてくる。 「蓮人くん!まぁまぁ、ますます良い男になって」 姿を現した香苗は、数年前と全く変わらず、若々しく優しい空気を纏っていた。 蓮人は一気に肩の力が抜け、顔が綻ぶ。 まるで子供の頃に戻ったみたいな、不思議な感覚に陥る。 そこへ、 「わー!お花のお兄ちゃんだー!」 「すげー本物!かっこいいー!」 勢いよく幼児達がやって来て、ますます笑みを深めた。

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