66 / 83
第65話
「ふふ。凄いでしょ?先生のお友達なのよ」
香苗が得意げに言い、蓮人ははにかみながら、
「こんにちは。俺も昔、ここにいたんだよ」
「えっマジー!?」
「あの伝説は本当だったんだ!」
「何か嬉しい~」
瞳を爛々 に輝かせ、こちらを見据える子供達。
その汚れのない眼差しに、心が洗われるようだった。
きっと辛い想いを沢山してきただろうに、こんなに純粋に育っている。
ひとえに香苗から注がれる、無償の愛のおかげだろう。
(良かった、皆いい子達だ)
それから和気藹々 と写真を撮ったり、庭で遊んだり、蓮人はすっかり童心 に帰っていた。
日が沈み夕闇が辺りを覆い始めて、ようやく子供達は遊びを止め、夕飯作りに取り掛かった。
ここでは自活出来るよう、年齢問わず家事はするようになっている。
「蓮人兄ちゃん、今夜はカレーだぜ!」
「絶対美味しいから、沢山食べてね~」
子供達の無垢な、満面の笑みが眩しい。
(芽もこんないい子に育ってほしいな、……)
と考えて、ハッとする。
……自分にそんな事を考える権利はあるのか。
春樹を独占するからと、大人気なく嫉妬してた癖に。
ふと思考が元に戻り、肩が重くなる。
すると。
「蓮人くん。夕飯が出来るまでお話しましょう」
「!ええ、勿論」
何かを察したような香苗に促され、施設長の部屋に通された。
そこの壁には子供達の写真がところ狭しと飾られており、彼女の想いが窺 える。
「あ、懐かしい」
その中に自らの姿を見つけ、頬が緩んだ。
高瀬家に迎えられ、少し経って挨拶に訪れた時に、記念に撮ったものだ。
美代子と剛健、そしてー今よりも大分幼い、春樹が居た。
まだ表情の固い蓮人の肩を抱き、人懐っこい笑みを見せている。
(可愛い……)
この頃からずっと彼が好きで、大好きで。
何年もかけてやっと手に入れ、家庭まで築いたのに、自身のせいで壊れそうになっている。
何て愚かなんだ。
(俺はやっぱり……春樹さんには相応しくなー)
そう暗澹 たる考えに囚われそうになった時。
「この時から好きだったのね、春樹さんのこと」
不意に虚をつかれ、ギョッとして目を見開いた。
ともだちにシェアしよう!