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第68話
(……とは言え、やっぱり緊張する……)
翌朝。
早速香苗に帰宅する意を伝え、子供達に名残惜しげに見送られながら、蓮人は帰路についた。
「またいつでも来なさい。ここは貴方の『実家』なんだから」
最後に掛けられた香苗の言葉は、いつまでも脳裏に響いて。
怖じ気づきそうになるたびに思い出し、自身を奮い立たせた。
(大丈夫、大丈夫)
心の中で、繰り返し言い聞かす。
ーバスを乗り継ぎ、見慣れた景色の中をしばらく歩くと。
閑静な住宅街に屹立 する、自宅の門が視界に入ってきた。
途端に足がすくむ。
春樹と芽に会いたい気持ちと、でももし嫌悪 されたら、という不安がせめぎ合う。
(しっかりしろ、俺!)
と頬を軽く打った瞬間。
突然門が開いてー春樹が、姿を現した。
慌て出てきたのだろう、寝巻きである浴衣のまま、髪の毛だってボサボサで。
瞼は赤みを帯びて腫れぼったく、肌は白を通り越して青白い。
それでも、……可愛い。
可愛くて堪らない。
(ああ、やっぱりー)
好きだ。
春樹以外、愛せない。
などと勝手に惚気ていたら、彼が全力で駆け寄ってきて、そして。
「蓮人っ……!ごめん、本当にごめんっ……!」
幼子の如く泣きじゃくりながら、勢いよく抱きついた。
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