69 / 83

第68話

(……とは言え、やっぱり緊張する……) 翌朝。 早速香苗に帰宅する意を伝え、子供達に名残惜しげに見送られながら、蓮人は帰路についた。 「またいつでも来なさい。ここは貴方の『実家』なんだから」 最後に掛けられた香苗の言葉は、いつまでも脳裏に響いて。 怖じ気づきそうになるたびに思い出し、自身を奮い立たせた。 (大丈夫、大丈夫) 心の中で、繰り返し言い聞かす。 ーバスを乗り継ぎ、見慣れた景色の中をしばらく歩くと。 閑静な住宅街に屹立(きつりつ)する、自宅の門が視界に入ってきた。 途端に足がすくむ。 春樹と芽に会いたい気持ちと、でももし嫌悪(けんお)されたら、という不安がせめぎ合う。 (しっかりしろ、俺!) と頬を軽く打った瞬間。 突然門が開いてー春樹が、姿を現した。 慌て出てきたのだろう、寝巻きである浴衣のまま、髪の毛だってボサボサで。 瞼は赤みを帯びて腫れぼったく、肌は白を通り越して青白い。 それでも、……可愛い。 可愛くて堪らない。 (ああ、やっぱりー) 好きだ。 春樹以外、愛せない。 などと勝手に惚気ていたら、彼が全力で駆け寄ってきて、そして。 「蓮人っ……!ごめん、本当にごめんっ……!」 幼子の如く泣きじゃくりながら、勢いよく抱きついた。

ともだちにシェアしよう!