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第78話
それからしかし、やはり芽はいつも通りママっ子のままだった。
気になるのはやたら「ママは僕が守るから!」と、以前にも増して言うようになったこと。
その一生懸命な姿は、とても自分を拒絶しているとは思えない。
だが授業参観の話になると、途端に頑 なになるのだ。
(よく分かんねぇな)
もっと追及 したいものの、焦りは禁物である。
下手に探りを入れて、芽を傷付けたくない。
春樹は至って穏やかに、優しく接するよう努めた。
いつか彼から真実を話してくれると信じて。
そんな日常が続く中、自宅で一人家事をしていると、学校から電話が入った。
『高瀬さん、突然すみません。芽くんのことでご相談がありまして……』
以前校内で会った聖からだった。
やけに神妙な気配を察して、春樹は心臓が跳ね上がった。
担任ではないから、接する機会は少なそうだが……。
「は、はい。あの、何でしょう」
『直接お話したいので、今から学校に来て頂けますか?』
「そ、そうですか……分かりました」
電話では話せないとは、余程深刻な状況なのだろう。
通話を切った後も、動悸が止まらなかった。
蓮人は仕事で出ているし、芽はまだ学校なので様子が分からない。
(俺がしっかりしなきゃ!)
そう自身を奮い立たせ、必死の思いで家を出た。
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