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 カラオケ店に入ってから、結構お酒を飲んでいた。  酔ってることを自覚する。  洋楽でも邦楽でもアニソンでも歌はなんでも好きだった。音楽を嫌いになりそうなこともあったけど、今もこうやって楽しく歌っていられるのは純がいたからだ。  ――欲しい、欲しくない。会いたい、会いたくない。  そんな、切ない恋心の歌詞。  女性ボーカル曲だがキーもスピードも違う、原曲のイメージは、ほとんど消えている。  歌い終わって画面に採点が表示される。音が外れてなくても、リズムも含めて自分の曲にして歌っているので点数がふるわないのは予想通りだった。 「結斗の歌、まじ泣ける」 「かっけーな、ホントお前の歌好きだわ」 「ありがと、ほら次、瀬川の順番」  マイクを隣の友達に回す。友達の拍手も賞賛の声も全部どうだって良かった。  相手を意識する歌い方は染み付いているのに評価には興味がない。  歌うことは好き。一緒に楽しんでくれたらそれでいいし、自分が楽しければそれでよかった。  百点とか、九十点とか、五十点とか。  ランキングとか。  順番なんて、どうでもいい。  一番欲しい評価は手に入っているから。純が喜んでくれたら、それでいい。一番嬉しい。  その瞬間、会いたくないが、会いたいに変わった。  あんなに、純の家へ行くのを躊躇していたのに。

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