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俺だって、といいながら「純に依存してばっかりのお前に何が出来るんだよ」ともう一人の自分が指差して笑っている。
昨日歌ったときと同じ「俺だって出来る」と思った。
――で、なにが?
歌える、それがなんだと思った。
ただの趣味だ。
「俺、結斗の方が、俺に話あると思ってたんだけどな、昨日のこと」
純は結斗に向き直り、ピアノの椅子に座ったまま結斗の手をそっと握った。その手の冷たい温度に心臓が深く波打った。
「は、話って、純が機嫌悪いのってそれ? 昨日は来れなくて悪かったけど、クリスマスなら、今年も純と一緒に」
一緒にいたいと思っている。ずっと、この先も一緒にいてほしい。そう思っているのに。罪悪感がずっと心の中にある。
「違うよ」
多分、逃げられないように手を握られていた。都合が悪くなると結斗は逃げるから。問題と向き合わないから。
純は最初から知っていた。
ずっと結斗が逃げていること。答えを出せないこと。
「あの動画のMOMOって、結斗でしょ」
「え、何で、知って」
「ランキング上がってたし、お前の声なんて聴けばわかるよ」
「う、うん」
「それでさ、俺も、結斗と同じこと訊いてもいい?」
「同じ、こと……」
純に唐突に手を引かれ向かい合わせで膝の上に座らされた。小さな子供みたいに近い距離でそばにいるのに純の視線は、もう小さな子供の目をしていなかった。
子供じゃない。大人の純。
(知ってる。ちゃんと、全部見てた)
幸せな今のままがいいからと、ずっと目をそらせて向き合わなかった。
自分が一瞬だけみた純の姿で何度も妄想した。
高校生のときピアノの前に座ってシていた純の唇の動き。自分にとって都合のいい妄想だ。
――ゆ、い。
呼んでくれたらいいのにって思った。
自分の気持ちは普通じゃないからと、気づかないふりした。そうすれば……。ずっと。
一緒にいられるから。
「ゆい、プロになるの?」
「……プロって」
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