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 瀬川と別れ、その足で新大阪の駅に向かっていた。  親に渡されていた一週間分の生活費と自分のバイト代で片道分の電車賃しかない。  それでも何とかなると根拠のない自信があった。それに純と一緒に帰ってくる未来しか考えていない。違っても、ここまで迎えにきてって言うつもりだった。きっと、結斗は同じことを純に言われたら嬉しくてヒッチハイクしてでも会いに行く。そんな傲慢を嬉しいって思う。 (赤ちゃんで、王様なんだよ、悪いか。お前だって同じじゃん)  一緒の部分に気づいたら嬉しくてたまらなかった。  純が本当の意味で一緒なら、もう仕方ないと思った。自分たちは、変で、バカみたいだ。けれど、だからこそ諦めにも似た覚悟が出来た。  ――純が嫌だって言ってもずっと聴く。  約束したもんな。小さな子供のときに言ったプロポーズのような言葉。それを未だに信じている純が可哀想で可愛いと思う。  大好きだった。  新幹線に乗っている間、結斗は純がいる場所の目星をつけていた。そんなことをしなくても、スマホで「どこ?」って聞いて簡単に会ってしまうことも出来た。  ただの結斗の直感。  純は、まだ機嫌が悪いし怒ってる。 (告白したのにキレられたんだもんな。そりゃ怒るわ)  普段より更新数の多い純のSNSは、電話で謝るくらいなら、さっさとここまでこいと言っているような気がした。  純は自分の半分だって今でも思ってるし、連絡なんかしなくても会えると思った。  駅について頭の中に叩き込んだ道順を足早に歩いた。クリスマスのイルミネーションなんて目もくれず、一分一秒が惜しかった。そうして、やっとの思いで辿り着いた目的の場所に、純はいなかった。  今日から設置された新しいストリートピアノでは、クリスマスメドレーを知らない誰かが演奏している。SNSの情報を見た限り数時間前まで、この場所に純がいたことは分かっている。  けれど今はいない。いないことが分かったなら、すぐに次の場所を探すまでだった。結斗が踵を返そうとした時だった。 「あれ、桃谷くん?」  雑踏の中、突然肩を叩かれた。

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