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第4話

まず、沓名と出会った時、沓名は既に蓮田大学の推薦をもらっていたので、伊福も猛勉強を開始した。 その2年後、伊福は何点か足りずに蓮田大学へは入れなかったものの、蓮田大学とそこそこ交流がある惠桜(けいおう)大学の文学部へ入れた。元々、少し低いレベルか同じくらいのレベルの蓮田大学の文学部を目指していたこともあり、授業等はそこそこついていけていたが、それだけでは不足で、伊福は学業や家庭教師のアルバイトにも精を出す。自身で着る服はケチれるが、沓名へ渡すプレゼントは妥協したくない。1ヵ月前にプレゼントした財布もかなり値が張るものではあったが、普段、沓名がよく着ている服の色やデザインに合うものを選んだつもりだ。 それに、自分が沓名に告白した手前、男性同士のセックスについても勉強し、沓名を傷つけないように何度も何度もシミュレーションを繰り返す。 「直樹くん、いつも良いプレゼントを用意してくれるし、その、僕を傷つけないように一生懸命、勉強してくれたのは分かってたんですけど、どんどん不安になって……」 沓名はくしゃりと自身の下半身を覆い隠しているブランケットを掴む。 沓名の顔はブランケットを見ていて、伊福の方を見ていなかったが、思えば、イベントの2ヶ月前くらいになると、殆ど沓名には会わず、バイトに明け暮れる。誕生日とかクリスマスとかで甘い雰囲気になると、沓名の服を正して、逃げるように眠る。 沓名の顔は不安に影を落としていたものさえ美しいが、そんな表情をさせているのは紛れもなく自分自身だと思うと、伊福は自分が許せなくなった。 「沓名さん、すみません。沓名さんをそんな風に不安にさせてしまっていたなんて」 伊福は沓名に謝ると、沓名をベッドへと優しく倒す。 沓名は急に視線がブランケットから伊福の部屋の天井になり、慌てる。

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