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第10話(R18)
いつも余裕があり、美しかった沓名の切羽詰まったような言葉。
39歳になった伊福は20年前、沓名が伊福の前に裸で立っていた時を思い出す。そして、20年前の自分のことも思い返す。まだ未成年ということもあったが、童貞だったし、それ以上に自分に自信がなかった。
39歳になった伊福は笑顔で言った。
「伊福直樹という人間は貴方のことが心底好きなんだ。恋人になれた時なんか、前世にどんな善徳を積んだのか不思議なくらいだった」
「直樹……んっ!」
伊福は沓名の不安そうな顔を引き寄せると、そのまま肩を抱く。そして、軽めのキスを沓名の唇に落とす。
2人はベッドへ倒れ込むと、着ているシャツを少しだけ乱した。
「今は全部、脱がないで、ユキさんを抱くね」
「うぅンっ」
沓名のシャツから覗いた乳首を伊福は人差し指と中指でクニクニと触れる。
沓名とて初めての刺激に、声を上げる。
「あの頃の僕は余裕がなくて、こんなに可愛い君を見れなかったんだね」
「な……おき、く……アぁっ!」
特別、伊福も沓名と身体をつなげることを優先していた訳ではない。ただ、どうしても、セックスというと、最後には挿入ということになってしまうと20年前の伊福は思っていた。
仮に沓名を傷つけるかもと思っても、優しく沓名を撫でれば良かった。そうすれば、あの20年前の沓名も今、伊福の目の前にいる沓名も悲しませなかったと伊福は思う。
「僕はこの先もユキさんが好きだけど、もし、不安になったら20年前の僕の目の前で聞いてみて?」
「直樹くん、の前で?」
「うん。そうだな、できれば、裸で、僕の前で。最初は僕は戸惑って、君に服を着させるかも知れないし、ゴムも上手くできなくて、失敗するかも知れないけど、君が好きで愛しているのは保証する」
沓名は伊福から目を背けると、「分かりました」と答える。
それから、伊福は沓名にコンドームをつけさせると、後ろを向かせて、1度だけ挿入した。というのも、20年前の伊福の自信がこれ以上、なくならないようにする為に。
「あ、今のところ……」
伊福は20年間で覚えた沓名の前立腺をわざとずらしつつ押すと、沓名に自分が感じるところを確かめさせる。
「この辺り?」
伊福は少し加減して、沓名の前立腺を突いた。
「アぁ……」
沓名の身体は麻痺したように震え、伊福は沓名の前立腺を突いていた陰茎を抜く。
硬さをたもったそれを処理して、沓名の身体を拭く為のタオルを持ってくる為、バスルームに行った。
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