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第4話

 カルセドは何でもないように言うと、ベリルトは「いや」と首を振る。 「君の言葉は温かいから気にならないよ。温かくて、心地良い。それに綺麗だ」  ベリルトの口からスラスラと出てくる美辞に、カルセドは僅かに自身の気持ちが分からなくなる。  信じたいけど、信じ切ることはできない。  信じ切ることはできないのに、信じてみたい。  そんな矛盾したも良いところの気持ちで、心が揺さぶられる。 「ところで、今更だけど……」 「はい」 「君はどうして、この森へ? ここには一応、アールヴも住んでいる。人間の立ち入りは制限されている。禁断の土地にもなっている筈だけど」  それを言うと、ベリルトもここにいるのは禁忌を犯していることになるのだが、研究員として特例的に生活することを許されているのだと説明する。それに、なんと、ベリルトはアールヴとも交流があると言う。 「アールヴと?」 「ああ、普段はなかなか出くわすこともないがな」  ベリルトも冷め始めたスープの入ったマグを口に運ぶと、霧の向こうを見る。  霧の向こう。それは現在もどこかへいるアールヴを思ってのことなのか、アールヴと過ごした過ぎ去りし時を思ってのことなのか。  だが、それも一瞬のことだった。 「まさか君もアールヴの霊薬なんてものを当てにしてきたクチじゃあないだろうな?」  アールヴには霊薬、不老不死のエリクシアといった類のものを作り出せる個体があるという。何年か前にカルセドの生まれ育ったアイドクレースでもそういったものが出回り、高給取りの者達がこぞって買っているという噂もあった。  勿論、紛い物や中には人体に悪影響がある物さえあるらしく、カルセドも存在を信じていなかった……いや、信じてはいなかったが、見たこともないものを存在しないと言うだけというのも気持ちが悪かった。  それに、カルセドには他の理由もあった。

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